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「いのちゃん、心配してくれてありがとう。ちゃんとケガしないように気をつけるから、ね?」
もう泣かないで?と、親指で目尻の涙を拭うと、俺の掌に絆創膏貼ってあることに気づいて、

「またしてるじゃん、けがぁ…(泣)」と、涙ポロポロ。


いや、本当にちっちゃい傷だからね?!キャンプのロケって森を開拓することがあるから、ちょっとした擦り傷とか切り傷とかよくできるもん。

唾つけときゃ治るレベルの軽傷だって、きっといのちゃんもわかってるけど、それでも過剰反応するほど、メンタルが弱ってるってことだね。


逆に心配だよ、いのちゃん。





風呂上がりに絆創膏を貼り替えてもらって、『次はちゃんと軍手をつける』と約束して、泣き虫のネコちゃんの涙がやっと止まった。

目元を冷やすためにソファに寝転がって、膝枕と頭撫でるので落ち着かせる。
それから、もう一つしたいことがあって…

近くで見ると、やっぱりいのちゃんの肌が荒れてる。
いつもすべすべな白玉ほっぺに、滅多にできないニキビもできて、カサつきも目立ってる。


いのちゃんって、仕事が忙しくなると肌が荒れやすくなるよな…
手入れを怠ったわけじゃなくて、多分これも、ストレスが溜まった症状の一つ。

朝の番組を見た時からいのちゃんの肌の調子が気になって、知り合いのメイクさんにおすすめの化粧水や美容液を聞いたよね。

足を動かずに上半身だけ伸ばして、なんとかカバンに入ってるスキンケアアイテムを取った。


まずはコットンに化粧水をつけ、頬を優しく拭き取る。


「んん…冷たい…なにぃ…?」

「ごめんね、化粧水つけてるだけだよ」

「化粧水…?」

「そうだよ。俺、いのちゃん専属のエステティシャンだから、スキンケアを任せてくださーい」


なにそれ!って、いのちゃんが笑った。

「こんなイケメンなエステティシャンが付いてるって、俺ぜいたくすぎ…」


…この子、またしれっと嬉しいこと言う…!



「今日だけじゃなくて、いつでも指名していいからね?」

「ひかるやさしい…好き……」



舌足らずな告白の後、すぐに穏やかな寝息が聞こえた。



「…俺も、大好きだよ。お疲れ様。」



いのちゃん、これは優しさなんかじゃなくて、飼い主としての責任なんだよ?

弱音を吐けない、何でも溜め込むタイプのネコちゃんの負担を、定期的に取り除くのは。



だから、いつでもいいから、甘えてきてね?




-fin.

【飼い主とネコちゃん、一時的遠距離恋愛】hkin*1→←*3



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作者名:yoku | 作成日時:2020年8月16日 11時

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