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「いのちゃん?」
「…シック、…」
「いのちゃーん〜」
「……グス、…ぅぅ…」
うーん、参ったな…
約束通り、自分史上最速スピードで手洗いうがい済まして、部屋着に着替えてリビングに戻る。
ソファに座った途端いのちゃんが自らしがみついてきて、いつの間にか俺の膝の上にいた(かわいい)。
そこから俺に抱きついたまま、ずっとしくしく泣いてる。
「ねぇ〜なにがあったの?ひかに教えて?」
首筋に埋めてるキノコ頭がふるふる。
ちょっと今回は手強いな…
でも、なんとなく状態を把握できた。
いのちゃんが俺のことをヒカ呼びするのはメンタルが極端にやられた時に限る。
最近ドラマやら番組のロケやらで大変だから、ストレスいっぱい溜まってたんだね。
一緒に住んでるからって、ちゃんといのちゃんのことを見てるつもりだけど…甘かったな、俺。
「…ぅぅ、…ひかぁ…シック…」
「はいはい、ひかここにいるよ?もう泣かないで?」
子供をあやすように背中をとんとんして、できるだけ優しい口調で話しかけて。
こんないのちゃんのレア度かなり高いけど、2、3回は出たことある。
にしても…こんなに泣くのは初めてだな。
現場で何かあったのか?ミスして怒られたとか?
いや、そんなことで泣くような人じゃないしな…
…まさか、いじめられた?
……いやいやいやないな、絶対ない。むしろめちゃめちゃ愛されてる。共演者にもスタッフさんにも、とにかく可愛がられてる。俺がやきもち焼いちゃうぐらいに。
じゃあなんでだ?
俺って学力はないけど地頭はいい方だって自信あるけど、相手が謎多きいのちゃんだったら話は別だ。
頭の回転の速さについていけないのはたまにじゃない。しょっちゅうのことだ。
しょうがない、このままだと埒が明かない。
理由は本人に聞くしかないから、そろそろ泣き止んでもらわないと。
「そうだ!いのちゃん、今日ね、キャンプのロケしたんだけどさ、すっっごい珍しい虫見つけたの!これ昆虫webにあげたらいいんじゃない?」
「……?」
キノコ頭、ビクともしない。
とりあえず片手で携帯を取り出し、写真探し…のふりをする。
「どこだぁ…?えーとね、…あった!!これだよこれ!見て見て!」
テンション高めにそう言えば、気になってくれるはず…!
「………むしぃ…?」
ほら、反応してくれた。
伊達にお芝居の仕事してないからな!
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作者名:yoku | 作成日時:2020年8月16日 11時