【8月12日】ybin *1 ページ1
(例のニュースに基づいたお話です。苦手の方はお気をつけください。)
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『感染確認した。明日全員PCR受けるから準備しといて。』
深夜にマネージャーからのグループラインを読んで、頭ん中に“ヤバイ”の三文字しか浮かんでこなかった。
伊野尾が…よりによって伊野尾が。
人一倍周りに気を遣って、いつも自分のことを後回ししてるあいつが…とにかく心配で。
確かに先週あたりから風邪なのか夏バテなのか分からない軽い症状が出てきたと言った。
でも熱などもなく、大したことないと思ったものの、
念のため、って言いながら今日受けた検査で、まさかの陽性反応。
アイツ…今どうしてるんだろう。
一人で寂しがってないかな?泣いてないかな?
一人で検査を受けたの、きっと怖かったよな…
とにかく了解したとマネージャーに返信して、あいつに連絡しなきゃ…と思ったその時。
♪〜
電話が鳴った。差出人は伊野尾。
「もしも…」
『薮?薮はだ、グス…大丈夫なの…?』
え?
それこっちのセリフじゃない?
「伊野尾?」
『ね、ねつとか、出てない?…グス…鼻水とか…』
声がすごく震えてるし、ぐすぐすと鼻を鳴らしてるし…完全に泣いてるじゃん。
「なあ、…」
『ごめん、ごめんね?俺が、グス…もっと気をつければ…みんなに、迷惑かけちゃった…』
こんなに取り乱れてる伊野尾久しぶりだ。
いつもヘラヘラふわふわしてるこいつ…実は誰よりも繊細なところがあって。
今すぐにでもそばに駆けつけて抱きしめてあげたいのに、できないのが歯がゆい。
『どうしよ…グス…みんなにうつったら…』
「伊野尾、」
『…スタッフさんたちも…グス…あと、あと三宅さんと久本さん…どうしよ…年寄りは重症化しやすいって…』
ちょっと、今の言い方失礼だぞ?笑
でもやばいな、めちゃめちゃネガティブモードに突入したな。
分からなくもないよ、検査結果に一番ショックを受けたのはきっと本人だろうし。
「伊野尾」
『メンバーに、…やぶに何かあったら、おれ…グス…』
「慧、聞いて。」
名前呼んだらしゃべらなくなった。この手まだ効いててよかったよ。
「一回切って、俺がかけ直すから、出ろよ?」
『……』
「てか出るまで待つからな」
とりあえず、顔が見たい。
音声だけじゃ足りない気がして、俺の顔を見せたほうがこいつも少しは安心できるんじゃないかと。
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作者名:yoku | 作成日時:2020年8月16日 11時