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次第に、雨はやんでいく。
服に水玉模様もできないくらいの小雨になった時、黒木君が私を振り返った。
「じゃあ、俺は帰るよ。
アーヤ、ありがとう」
そう言って、背中を向ける。
「ありがとう」
その言葉が、やけに悲しく響いて、
その瞬間、私は何故か、手を伸ばしていた。
「………
…アーヤ?」
不思議そうに振り返る黒木君。
私自身……どうして、彼の服の裾を握っているのか分からない。
ただ……
帰してはいけない気がした。
別れを告げた彼の瞳が、あまりにも深い闇の色をしていて。
向けられた背中が、今にも泣き出してしまいそうで。
「………」
私は、黙ったまま、彼の服をぎゅっと握る。
黒木君は、何も言わず、私を見つめていた。
ほら……その瞳。
私はその目を、何度も見たことあるよ?
・
自分という存在が分からなくて、
何のために生きているのか
生きていて何になるのか
進むべき道が分からなくて
すべてを投げ出したくて
そんな……
諦めのような、悲しみのような
やるせない涙が溢れてくる……
その直前の瞳。
私が何度も見てきた。
鏡の中で、私もそんな顔をしていたの……。
疲れ果てた、瞳。
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イズミ - 黒木君が泣くという発想がわたしにはおもいうかばなっかたので、すごいとおもいます。 (2023年3月13日 18時) (レス) @page12 id: 6ccf209779 (このIDを非表示/違反報告)
イズミ - アーヤが7人で見たらぎゅうぎゅうだよ。って言った後、「アーヤ最強。」と言われているのも面白かったけど、どいう意味かアーヤが分かっていないのが面白かったです。 (2023年3月13日 18時) (レス) @page6 id: 6ccf209779 (このIDを非表示/違反報告)
ずず(プロフ) - わ、待ってます! (2019年1月6日 0時) (レス) id: 054a7adbe3 (このIDを非表示/違反報告)
花畑(プロフ) - ずずさん» 了解です(笑)次の「誰も知らない物語3」で書かせていただきますね!いつになるかは分からないですが…その時はよろしくお願いします。 (2019年1月5日 21時) (レス) id: e150cc9add (このIDを非表示/違反報告)
ずず(プロフ) - 大丈夫です、嬉しいです!あ、いや、受け取らなくてもいいですよ…? (2019年1月5日 20時) (レス) id: 054a7adbe3 (このIDを非表示/違反報告)
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