きっと、もう遅い。【実ｼ兄者】 (ページ8)

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勝者はどっち？(tn、sn) 2 ページ8

..あれ、私、もしかして寝てた..？
時計を見ると、針は18時57分を指していて。
自分の顔が真っ青になっていくのを感じる。

まずい、19時から夕食なのに..！
我が国では、軍の幹部とその補佐は一緒に食事をとる事になっている。そして勿論時間厳守。
まずいまずいまずい、急がなきゃ！

本当は走っちゃいけない筈の廊下を全力ダッシュで駆け抜け、重々しい食堂の扉を開ける。
そして、私の目に映ったのは＿
本来ならば私の席である書記長の右隣に座るシュリンの姿と、焦ったように目を見開く書記長。

2人の関係はわかっていたはずなのに、足元がグラついてしまった。そのまま私の身体は重力に逆らうことなく倒れ込む。

あ、これ、痛いやつだ

そう思い目をギュッっと瞑った瞬間、暖かい何かが私を包み込み、ふわりと優しい匂いが鼻腔を擽った。
恐る恐る目を開けると、私を支えてくれていたのはペ神さんで。
書記長が何かを言いたそうに口を開くが、その前にペ神さんが私に声をかける。

｢Aちゃん、トントンの隣シュリンさんが座ってるし、俺の隣おいで｣

『あ、ありがとうございます..』

優しそうな笑みを浮かべて私を隣に座らせてくれるペ神さん。この人には、いつも感謝してばかりだ。
..というのも、実は私はペ神さんに睡眠安定剤や貧血を軽くする為の薬を貰っている。
そして今日もその薬を貰ってきたばかりだった。

｢｢｢｢｢いただきます｣｣｣｣｣

皆が両手を合わせていただきますをし、食べ始める。
私も同じように食べ始めようとしたのだが、何故か箸が進まない。目の前の料理はとても美味しそうなのに。

それでも震える手で何とかご飯を口に入れると、とてつもない吐き気が私を襲った。
..これ、ダメかもしれない。
しかし、流石に1口も食べない訳にはいかない。
半ば無理やりご飯を飲み込むと、胃が拒否しているのか胃液とお米が口までせり上がってくる感覚。

きもち、わるい..

思わず口に手を当てて俯くと
｢大丈夫？｣と優しい声と一緒に背中を撫でられる。
ちらりと手の主を見やると、私を心配そうに覗き込むペ神さん。

いつもの私だったら、絶対に頷いていたその問い。
過度なストレスかペ神さんの優しい手がそうさせたのかは知らないけど、気づいた時には首を横に振っていた。

誰かに助けを求めるのは、久しぶりだった。