いつもみたいに。(tn) ページ5
｢本当に、普通の日だったよね。
少し曇った空も、優しく笑うあなたの笑顔も、暖かい繋がれた手も。
あの日は普通にデートをして、普通に2人で夜景を見て、普通に家に帰るはずだった。
1人で見てきたいものがあるからちょっと待っててくれ、なんて言って帰ってきた貴方に車が突っ込んでいくまでは。
それからの事は、もう、よく覚えてないや。
気がついたら救急車に乗ってて、気がついたら病室で静かに眠る貴方の手を握ってた。
そしたら白衣を着た男の人が難しい顔をしてこっちに向かってきて、
｢手術は成功しましたが、意識は、恐らくもう戻らないでしょう｣
なんて言ったんだよ。
その瞬間涙がボロボロ溢れてきて、いつもみたいに暖かい貴方の手を強く握ったの。
そうすれば、どんなに忙しい時でも構ってくれたから。今回も、｢どしたんA、そんなに泣いて。ほら、おいで？｣なんて起き上がって、抱きしめてくれると思ったの。ほんと馬鹿みたいだよね。
そんな事毎日やってるけど、貴方が起きた事なんてないのに。
でね、なんで今日こんな話をしてるかって言うと、実は昨日、電話が来たの。あなたの心臓と、データが合う人がいるんだって。私、どうすればいいと思う？』
視界が滲んで、嗚咽が漏れる。
貴方の手をギュッと握った。今、起きてくれればいいのに。
貴方は優しい人だから、もし俺がダメになったら臓器はいる人の所にあげて欲しい。なんてTVで臓器提供の話をやっていた時に言っていた。
汚い考えだけど、貴方はまだ生きているから。
もしかしたら起きるかもしれないのに、提供してそのチャンスを潰す事なんでしたくなかった。
本当に、私は屑だ。
涙が貴方の手に落ちる。
少し、手が動いた気がした。
少しでも貴方に近付きたくて、椅子から降り、ベットにもたれ掛かる。そのまま俯いて泣く私の名前を、誰かが呼んだ。それは、貴方の声に似ていて。
後ろで誰か動く音がする。
もしかしたら、なんて希望を持って振り向くと。
そこには、起き上がって、いつもみたいに優しく微笑んだ、
あなたが居た。
ーーーーーーー
起きないENDにしようと思ってたんですが、
ハピエン厨の私の親指達がそれを許しませんでした。
どうでもいい話をするとtnさんは半年以上寝たきりでしたね。
私は医療関係にあまり詳しくないので、
臓器提供の件の用語(？)や伝え方や、半年以上寝たきりだった人間が自力で起き上がれるのかどうかは定かではありません。間違ってたら指摘お願いしたいです
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作者名：みそ漬けキュウリで殴る | 作成日時：2020年5月29日 15時
