『中毒産業』＊アディクトインダストリー＊ ページ17
彼は、面白いと思う者と出会った時に目の色が変わる。
あの時もそうだった。
天性の『人を見る目』があるのだろう。
一瞬でその人間が自分にとって有益なのか無益なのかを見分けている気がする。
それは本当に偶然だった。
「腹減ったー...」
後部座席から聞こえたその声に、俺は「どこのレストランを予約致しましょう？」と応えた。
「あー...今すぐ何か食いたい。俺、朝から何も食ってねぇの」
俺が秘書として仕えてる櫻井社長は、言い出したら聞かない。
本気で今すぐ、何か食べたいんだろう。
でも朝から何も食べられなかったのは、自分が寝坊したからでは？と思うが、それは口に出さない。
「あ、あの店で良いや。停めて」
『あの店』と社長が指さしたのは、小さな定食屋。
昔からそこにあったのであろう、古びた佇まいだ。
「かしこまりました」
俺は近くのパーキングに車を停めて、社長と一緒にその定食屋へ向かった。
決して綺麗ではない看板に『みどり亭』とある。
ガラガラと引き戸を開けると、奥から「いらっしゃいませー！」と大きな声。
意外にもそれは、若い男の声だった。
あの外観からして先入観で従業員に若者が居るとは思わなかった。
「いらっしゃい、お二人かな？」
そう声を掛けて来たのは、年配の男性。
こちらはイメージ通り。
白髪混じりの頭で、紺色の前掛けをしている。
「はい、2名なのですが...大丈夫でしょうか」
そう訪ねたのは、思いのほか店内が盛況だったからだ。
常連らしき客達で賑わっている。
「カウンターなら空いてるんだけど…それでも良いかい？」
男性が社長をチラッと見た。
その気持ちも分かる。誰が見ても高級だと分かるスーツを身に着けている彼は、明らかに浮いている。
「...どうなさいますか？」
店内をキョロキョロ見渡してる社長に訊くと「え？どこでも座れりゃいーよ」と、俺を見た。
そのまま男性に目配せすると、微笑んで「じゃ、こちらへどうぞ」とカウンターに水を運んでくれる。
「カウンターお二人様だよー」
「はーい！いらっしゃーい！」
カウンターの向こうにある厨房に居た若い男がくるっと振り返った。
「あっ、初めましてさん！いらっしゃい！」
『ニッコリ』という言葉がここまで似合う笑顔は初めて見たかもしれない。
そんな事を本気で思ってしまうような笑顔で、彼は俺たちを迎えた。
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るこ(プロフ) - 完結ありがとうございました。多分今の私の気持ちreiさんの気持ちと似た気持ちだと思います。でもreiさんのお話大好きなので、またお会いできるのをのんびり待っていますね。 (2020年5月23日 17時) (
レス) id: f06a1e9de4 (このIDを非表示/違反報告)
ジュン(プロフ) - 完結、ありがとうございました。そしてreiさんのお気持ち、分かるような気になってます、すみません。また書きたいなと思える時がきたら、よろしくお願いいたします。reiさんが大好きなので、無理せず、楽しくお過ごし下さいね。 (2020年5月19日 0時) (レス) id: 60fee0eb93 (このIDを非表示/違反報告)
あもゆ(プロフ) - 完結おつかれさまでした。そしてありがとうございました。お互い素直になれなくてこじらせまくってしまい、お互いの気持ちが通じ合うまで長い時間がかかってしまいましたが、とにかく良かった｡ﾟ(ﾟ´ω`ﾟ)ﾟ｡自然と涙が出て流れてました。 (2020年5月17日 7時) (レス) id: 7ecebd6013 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - 完結お疲れ様でした。まぁくんのちょっと能天気で優しいところが分かって良かった。主人公ちゃんからの目線だととんだ小悪魔だったからなぁ(笑) reiさん…創作意欲が涌いたら戻って来てね。待ってます。アデュー (2020年5月16日 11時) (レス) id: aab6d8833f (このIDを非表示/違反報告)
おちょう@7(プロフ) - まー君サイドのお話も、完結ありがとうございます。切なさMAXで、最後まで読みました。二人の幸せを願います。こちらに載っている短編は、どれも好きなお話ばかりです。またお会い出来る日を楽しみにしています。 (2020年5月15日 19時) (レス) id: 9201910101 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2019年8月5日 21時
