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「も、やだ、、」
俺と如恵留は全然違って、如恵留は頭もいいし、運動も得意だし、器用だし、なんでもできる。俺は頭も悪いし、病気だし、なんもできない。たったひとつしか違わない兄弟なのに、なんでこんなに違うんだろう。
「泣いたら苦しくなるよ。ちょっと落ち着いて。もう、泣き虫なんだから」
俺がどんなに当たっても、如恵留は怒らない。動じない。それも悔しくて、羨ましくて、届かないと思ってしまう。
「点滴終わったから帰っていいって。心臓がすごく悪くなってるわけじゃないけど、ちゃんと休んでねだって」
如恵留の声に頷くのも嫌で、タオルを顔に押し付ける。
「もう、、なんでそんなに意地っ張りなの」
「俺は如恵留と違うの」
「違くないよ。ずっと一緒に育った兄弟なんだから、基本のパーツは一緒でしょ」
「ちがう。如恵留は、なんでもできるじゃん。勉強も運動も。友だちもたくさん。お父さんも如恵留のこと自慢に思ってる」
「僕がいろいろできるからって、関係ないでしょ。病気のことで出来ないことがあるのも、悔しいことがあるのもわかってるけど、それ以外にも、やる前から諦めてること多いと思うよ。それを人のせいにしないで」
優しい如恵留の、厳しい言葉が心に刺さる。確かにそうだ。優しいお父さんと、如恵留に甘えて、何もしてこなかったのは俺だ。わがままばっかり言って、みんなを困らせてる。
「何も出来なくないよ。無限の可能性があるんだから。自分のやりたいこと、ちゃんと探してごらん」
ほら、いくよ、と言われてその背中を追いかける。俺はいつも、この背中に追いつきたくて、追いつけなくて、でも如恵留は絶対に俺のこと置いて行かなくて、隣に来るのを待ってくれた。
「あ、お父さんだ。夕飯食べに行こうって」
「いちごのクレープ食べたい」
「またそうやって甘いものを、、お父さんに聞いてみよう」
真新しい如恵留の車に乗って、家に戻る。いろんなことがあったけど、結局クレープも食べられそうだし、なんだかんだいい日だったかも。明日はもう少し自分から、いいことを探しに行こう、そう思った。
--追いかける背中--
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イカ(プロフ) - ユルピさん» 遅くなってしまい、申し訳ありませんでした💦 (2023年4月6日 12時) (レス) id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
ユルピ - イカさん» お話見ました!とても如恵留くんが頑張っている様子が伝わり感動しました!また、リクエストしますね〜 (2023年4月6日 8時) (レス) @page44 id: 05904f8bd6 (このIDを非表示/違反報告)
睡眠(プロフ) - こんにちは!ざっくりとしたリクエストだったのにも関わらず、とても素敵なお話にして下さり、ありがとうございました♡何度も読み返し楽しませて頂きます!これからもイカ様の作品を楽しみにしています(*^^*) (2022年12月12日 10時) (レス) id: 1f31f14422 (このIDを非表示/違反報告)
イカ(プロフ) - 睡眠さん» お待たせして申し訳ありません。「ずっと、一緒に」にお話を更新させて頂きました。お読みいただけると嬉しいです。 (2022年12月12日 8時) (レス) id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
イカ(プロフ) - 睡眠さん» コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまい、申し訳ありません。ずっと、一緒にへのリクエストありがとうございます。少しお時間をいただくかもしれませんが、お待ちいただけると嬉しいです。よろしくお願いします。 (2022年12月4日 22時) (レス) id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イカ | 作成日時:2022年10月8日 23時