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Noel
「海斗くん、おはようございます」
「のえる先生、おはようございます」
何年も時間をかけて、やっと言えるようになった朝の挨拶。海斗くんにとって名前を入れ替えることや、動詞の方向を変えることはとても難しいこと。でも根気強く練習して、最近は他の先生の名前もその場に応じて当てはめることが出来るようになってきた。
「朝の会、連絡帳」
必要なものを用意して朝の支度を終えると、海斗くんは教室の後ろにある海斗くんコーナーに向かう。色々な特性のある子たちがそれぞれ落ち着けるように用意しているけど、海斗くんコーナーは窓際に小さな椅子と、天井から吊るしたキラキラ光るガーランド。海斗くんは調子が良くても悪くても、じっとその光を見つめている。多分それが、彼にとって1番幸せな時間。学校だから、やりたくないことも、苦手なことも挑戦しなきゃいけないけど、できることなら、彼の幸せな時間を守ってあげたいなと思う。
「いゃぁぁあああ」
廊下から、他のクラスの子の声が聞こえてくる。このクラスの子たちは学年が高いこともあって比較的穏やかな子が多いんだけど、まだまだ小さい子たちは学校に慣れることで精一杯。普段なら、これくらいの声はみんなスルーするんだけど、今日の海斗くんはちょっと気になっちゃった見たい。
「ん、、、」
両手で耳を塞いで、これでもかと言うくらい膝に額を擦り付ける。海斗くんは争い事が嫌い。喧嘩の声や、誰かの怒った声が1番辛いみたい。でも、泣いている声には不器用なりに優しく寄り添うこともできるから、やっぱり海斗くんは根っからの平和主義なんだと思う。
「海斗くん、大丈夫だよ。タオル使いますか?」
そう聞くと頷いたので、大きめのタオルケットを渡してあげる。普段は出しておかないんだけど、海斗くんはギュッとくるまって視覚や聴覚を遮断すると落ち着けるから、こういうときに渡せるように、いつも用意している。
「落ち着いたら、出てきてね」
そう伝えても返事はなかったけど、きっとチャイムがなったら出てきてくれると思う。
「のえるせんせい、おはようございます」
他の子たちも投稿してきて、暫くするとチャイムが鳴る。案の定海斗くんはゆっくりタオルから出てきた。そして、几帳面にそれを畳んで、僕の方へ歩いてくる。
「チャイムが鳴りました。朝の会の時間です」
「そうですね。朝の会の時間です。タオルはもう大丈夫ですか?」
「はい、ありがとうございました」
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イカ(プロフ) - ユルピさん» 遅くなってしまい、申し訳ありませんでした💦 (2023年4月6日 12時) (レス) id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
ユルピ - イカさん» お話見ました!とても如恵留くんが頑張っている様子が伝わり感動しました!また、リクエストしますね〜 (2023年4月6日 8時) (レス) @page44 id: 05904f8bd6 (このIDを非表示/違反報告)
睡眠(プロフ) - こんにちは!ざっくりとしたリクエストだったのにも関わらず、とても素敵なお話にして下さり、ありがとうございました♡何度も読み返し楽しませて頂きます!これからもイカ様の作品を楽しみにしています(*^^*) (2022年12月12日 10時) (レス) id: 1f31f14422 (このIDを非表示/違反報告)
イカ(プロフ) - 睡眠さん» お待たせして申し訳ありません。「ずっと、一緒に」にお話を更新させて頂きました。お読みいただけると嬉しいです。 (2022年12月12日 8時) (レス) id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
イカ(プロフ) - 睡眠さん» コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまい、申し訳ありません。ずっと、一緒にへのリクエストありがとうございます。少しお時間をいただくかもしれませんが、お待ちいただけると嬉しいです。よろしくお願いします。 (2022年12月4日 22時) (レス) id: bba6564774 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イカ | 作成日時:2022年10月8日 23時