女神ノ日記 有ノ赤 ページ8
グルちゃんと別れてからというもの、私の毎日は酷く退屈なものだった
リンクスは翡翠色の瞳でじっと私を見つめる
コンコン
ノックが響いた
「失礼しますね」
丁寧な言葉を使う青年が入ってきた
名をエーミール
私の友人で、良き相談相手だ
「いつになったら敬語は治るの？」
意地の悪い質問ということはわかっているが、彼の困った顔は退屈を埋めてくれる
いや、それは少し語弊があるな
彼と過ごすことで、私は退屈なことも、楽しかった日々すら一時的に忘れることができる
「勘弁してくださいよ」
そういって彼は苦笑いをこぼす
「ごめんって。それで、なんか面白いことでもあったの？」
私の問いにエミさんは首を縦に振った
目はキラキラと光り、紅茶に光が入ったような感じだ
「新しいノートを作りました！大学ノートっていうんですよ！」
興奮気味に言うエミさんは珍しい
中身を見ると使いやすそうなデザインのノートで、5mm方眼ノートよりも一ページに多く書けるようだ
「女性に人気がありそう…ね、私にも頂戴」
エミさんはカバンをあさり、五冊入りのものを取り出した
「ふふん！そのために持ってきたんですからね！これはバカ売れしますよ！」
得意そうにエミさんは言って、私に渡した
私はその様子に小さく笑い、リンクスは「ニャン！」と鳴いた
「ありがとう。エミさんはやっぱ天才だね」
素直にほめることは久しぶりだ
エミさんは顔を赤く染めて、それを隠すように両腕で顔を覆った
…新しい弄り方発見したかも
「あ、有難うございます」
私はそんなエミさんに紅茶を出して、ケーキを用意する
意外にも彼はよく食べるので、いつも食べ物は多めに出す
あの細い体のどこに入るんだか
「わ、おいしそうですね。グリムさんの作ったものは全部おいしいので大好きです」
そういって笑う顔はどこか幼い
どこか、グルッペンと重ねてしまうな
ぶんぶんと頭を横に振る
他の人と重ねるなんて失礼だ
今はエミさんと過ごしているのだから
「いっぱい食べてね」
私はそう言って椅子に座り、ロールケーキを口に運んだ
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