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18.瞳 ページ18

「杏寿郎…」



 私の声で我に返ったような彼は、


 強く抱きしめていた腕を離した。



「す、すまない!!!」



 急に顔を赤くして慌て出す杏寿郎の様子を見ていると、


 鍛えられた腕や硬い胸板、


 彼の匂いが急激に思い出されて


 私もなぜか恥ずかしくなって耳が熱くなる。



「だ、だ、大丈夫…!!」



 思っていたよりも大人な体つきに狼狽えてしまっただけ。



 多分…



 きっとそう。




 川の水面に浮かぶ三日月は


 揺れてその形さえ分からないほど。




「君の瞳に俺は弱いのかもしれないな。」




「私の瞳?」




「燃えるような深紅の色だ。


 とても綺麗だと思う。」




 そんなこと…初めて言われた。




「少しだけ…


 ほんの少しだけ俺の母にも似た瞳だ。」




 眉を下げて笑う顔がなんとも優しい。





「杏寿郎の瞳も綺麗だよ。


 お月様と太陽が重なったみたい。


 私たち人間にとって欠かせない二つ。」




 秋の優しい風に揺すられた紅葉が


 ひらりひらりと舞い落ちていく。




「君に話せて良かった。」



「私も同じ気持ちだよ。」




「母が亡くなったこと、もちろん辛くないわけではない。



 しかし、人は皆いつかは死んでいく。



 俺はその人の死を哀しみ続けるのではなく、


 
 その人が俺にくれたものを



 残してくれたものを大切に生きたいと思うんだ。



 そうすればきっとその人は心の中で生き続ける。」








 死を哀しみ続けるのではなく、


 自分にくれたもの、残してくれたものを大切にする…

 



 
「無論、考え方は人それぞれだがな!


 俺はそう思いたいんだ。」




 そう言って空を見上げる彼の横顔は



 燃えるように熱いのに



 触れてしまえば消えてしまいそうなくらい儚げだ。





「素敵な考えだと思う。


 杏寿郎って私と同い年だよね?


 なんだかもっとずっとお兄さんみたい。」





「そうか?」





「うん。


 きっと弟にとっても頼れる良いお兄ちゃんだと思うなあ。」





「そうだと嬉しいな!



 A、そろそろ冷えるから帰ろうか?」




「そうだね!」





 甘い金木犀の香りが私たちの身体を包み、



 少しずつお互いのことを知り始めた二人を



 星空は静かに見守っていた。







 

19.桔梗の簪→←17.太陽



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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - ハウンさん» ハウンさん、こちらこそお読みいただきありがとうございます!引き込まれると言ってくださり大変光栄です!続編も更新しましたので、引き継ぎお楽しみいただけるよう頑張りますね! (2022年3月1日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - misakimiさん» misakimiさん、ありがとうございます!まっすぐな煉獄さんの深い愛情が表現できていれば…と思います。これからもそんな彼を言葉だけではなく、仕草や態度での表現ができるように努めたいところです! (2022年3月1日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
ハウン(プロフ) - 素敵な作品を作っていただきありがとうございます!ものすごく感情移入してしまって胸が締め付けられるくらい引き込まれました!続編楽しみにしてます! (2022年2月28日 23時) (レス) id: 065a2165a6 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 今日も煉獄さんが素敵だ。押し付けがましいところは一切なく、ただただ彼女の幸せを願い笑顔を作れる彼は本当に素敵。 (2022年2月28日 21時) (レス) @page50 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - misakimiさん» 彼はあまり内緒話など出来なさそうですよね(笑) 巧いだなんて言っていただけて…嬉しすぎて今夜は幸せな気持ちで眠れそうです〜!いつもありがとうございます。 (2022年2月26日 21時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年2月5日 21時

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