伝わる体温 ページ30
*
午前３時２７分。
この小さな作業室に響くのはカチカチとマウスをクリックする音、エアコンから吹き出す風の音、何度も何度も進んでは戻ってを繰り返すビート。全然進む気配のなさについて出る溜息。
次のアルバムはもっと良い曲を、歌詞を、と周りに求められて、俺も求めて、毎日どんなにしんどい仕事の後でもここに籠るようになったのはいつからだったか。
ガンガン良いビートが浮んで止まらない時もあるし、何も浮かばなくてもう俺には無理かもしれないと思う時もある。
朝方まで画面を睨みつけて出来上がった曲が、次に作業室に来て聞いたらごみ箱行きになる時のやるせなさは、相当のダメージ力だ。
そんな時は部屋の電気も消してブルーライトを放つパソコンをぼーっと見つめたりしてる。
…なんか俺、だいぶヤバい奴みたいじゃん。
「帰って来て休めば？」とメンバーに何度も言われてるけど、いつも曖昧に流して結局ここにやってくる。作業室で寝てるから平気だとかなんとかごまかして。寝れやしないのに。
Aは最近ここには来ていない。
次のライブに向けてダンス構成を練るのを手伝ってくれというソンドゥク先生と一緒に連日スタジオに籠っているらしい。
毎朝会ったときにAがげっそりしてるもんだから、移動中や仕事の合間はお互い貴重な睡眠時間に当てる。
そうしてまた仕事が終わったら無理をして。その繰り返しだ。
不思議なもんで日中の僅かな時間以外寝れなくなってから、空腹感も消えた。
いや、眠気がひどすぎて空腹を感じなくなってるだけかもしれねぇけど。
そのおかげで最近肉付きが良くなってきた顔まわりが、スッキリしてきたような気がする。不健康極まりないダイエットだけど、まぁ痩せたんだし結果オーライだろ。
ただ、あんまり食わなくなったってことはその分エネルギーが劇的に足りなくなったってことで。
これが結構な問題だった。
なんせ俺らの曲はダンスが激しくて消費エネルギーも半端ない。でも余ってるエネルギーなんかないから、すげーしんどい。一人だけ他のメンバーの倍くらい踊ったみたいにゼェハァしてるし。
そういうとき、睡眠も食欲も大事なんだって高校の頃口うるさく言ってた大人の声が思い出されてうんざりする。
あーほんと人間ってめんどくせえ。
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 237人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りり - シュガの感じが想像通りで好きです。これからもシュガにいっぱい登場してもらいたいな......更新待ってます。 (2018年12月7日 16時) (
レス) id: 750d6a4b81 (このIDを非表示/違反報告)
よしこ - お仕事お疲れさまです。無理なさらないでください。続き楽しみにしています。 (2018年5月24日 10時) (レス) id: 55b0a2347b (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 続き、楽しみにしてます！ (2017年11月14日 19時) (レス) id: 90b0ec537d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：tnk | 作成日時：2017年10月2日 1時
