思春期たんじろ恋をする【キメツ学園】

32 泣いて ページ33

炭治郎side


久しぶりのAの温かさに包まれてもっと涙が溢れてしまいそうだ。
華奢な体、柔らかい肌……。
俺は彼女があずけてくれた体を抱き寄せた。

俺は今なんて声をかければいいか分からなくなってしまっていた。
何か言えたとしても「良かった」、その言葉のみで。
「ごめんね」という言葉はかけたくてもかけれない。
散々、禰豆子に謝らないでと言われ使うのは躊躇っているのだ。

好きだと気づけたのに…どうしてこんなことになってしまったんだ。

まず何から話せばいいのか、その思考が頭でいっぱいだ。
俺が黙ってしまっていると彼女はおもむろに口を開いた。


「私に近づいてくる男子がいてずっと避けてたの」


あの男どものことだろうか。

俺は話を真剣に聞いた。

俺との距離が遠くなってから男どもに絡まれてしまうようになったらしい。
避けても避けても寄ってくるためにある程度あしらおうと考えていたようで。
しかし男どもはAが避けていることに気づくと強引に体を触ったり引っ張ったり。
助けを求めようにも脅しが怖く周りに迷惑をかけるのが嫌だった、
体育館倉庫に入り浸るようになりそこで軽く閉じ込められていた……、と話す。

全てがここで分かった。

彼女が急に俺と会わなくなった理由。
彼女が俺と久しぶりに会った時に男に絡まれ「ごめん」と言った理由。
やけに手が赤く腫れていた理由。

俺はてっきり彼女が俺に感心を持たなくなったから避けて離れたのかと…。
全く違っていた、これはSOSだった。

俺はやるせなさに袖を濡らした。
情けなさすぎる、俺に何かできたのに。
自分を責めた。


「俺は何もできなかった……」


長男なのに情けなくずびずびと泣いてしまう。


「そんなことない、炭治郎は何も悪くない」

「でも………」


俺がずびずび泣いていたのを超える勢いで彼女も顔をしとしと濡らす。
今だけでもいいから二人で思い切り泣いてしまおう。

泣いて泣いて時間は経って日が落ち暗くなり始める。
先生に「ご迷惑おかけしました」とちゃんと謝って学校を後にした。

二人で家へと帰る。
これは初めてのことでなんかぎこちなくて不思議。
俺は彼女の歩幅と揃えながら暗い道を歩いていた。
空にはちっちゃな星が光を一生懸命に放っている。

マフラーを巻いて体を温める。
手も冷えそうで必死に息を吐いた。

互いに目が腫れかけて話す話題も特になくなってしまっていたが、
彼女は何を思ったのか急に話し出した。


「私、気づいた……」

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