#145『腐っても人間』 ページ10
国木田に呼ばれた朔は、ヨコハマことある広場に着いた。
その広場の中心にある大きな噴水の横のベンチの周りに国木田達が居た。
「お疲れ様です、国木田さん」
朔はにこやかに歩み寄る。そこに居た全員の視線が降り注いできた。
「貴女が『黒髪の撫子』さんですね」
かの『黒髪の撫子』はベンチに座っていた。
流れるような黒い髪に、少し切れ目気味な目。清楚な服。
これこそ美女、の代名詞にふさわしい女性だった。
そして朔が一番気になっていることを言葉にした。
「それより、何故マフィアの樋口さんが?」
地面に泣き崩れていただろう樋口を見た。
「嗚呼、それは・・・・・・」
国木田の言葉に朔は目を見開いた。
「芥川龍之介の妹!?」
此奴も驚く事があるのか、国木田は朔をマジマジ見る。
全て御見通し、の朔が年相応の表情を浮かべているのは珍しい。
国木田は『黒髪の撫子』もといい芥川龍之介の妹銀に近付く朔の背中を見た。
「確かに、切れ目な所が似てますね」
朔は銀の瞳を覗き込んだ。いきなりの事で銀は咄嗟に後ろに身を引いた。
すみません、と朔は自身の上体を戻した。
「お初目お目にかかります、ではありませんね。探偵社員の萩原朔です。
黒蜥蜴の襲撃以来ですね、貴女の顎を蹴りあげたのが僕ですよ、まさか女性とは知らずに・・・・・・すみません」
朔は苦笑いを零した。銀は嫌な記憶を思い出したのか、朔から目を逸らした。
「でも、面白いですね」
朔は独り喋り続けた。
「あの無情な殺人鬼とも謳われるポートマフィアの狗『芥川龍之介』に妹が居たとは。
彼も腐っても人間という事ですね」
朔は玩具を見つけた子供のように笑った。
傍から見れば、無邪気な少年だが銀は狂気を感じた。
怖い、銀は思った。
「でも、樋口さん良かったですね。彼女が芥川さんの想い人では無くて」
嬉しさで泣いている樋口、今度は視線を向けた。
「まあ、田山さんはドンマイですね」
恋文を渡し、灰になっている田山に声をかける。
「朔帰るぞ」
国木田の声掛けに、釣れないですねと朔は呟いた。もうちょっと銀と話したかったのだ。
「では」
朔は律儀に銀と樋口に一礼すると敦と一緒に探偵社の帰路に着いた。
「中島さん、芥川さんってどんな人ですか?」
「嫌な奴ですよ」
敦は吐き捨てるように言った。
「是非、会ってみたいですね」
朔は上機嫌に言った。
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飛沫(プロフ) - ゑごまさん» コメントありがとうございます。この作品を好きになってくれて嬉しいです!!他の作品も・・・・・・感無量です。今日で定期考査も終了するので随時更新を再開したいです!!ゑごまさんも体調にお気をつけて下さい。 (2020年7月31日 7時) (レス) id: 5cd376c69b (このIDを非表示/違反報告)
ゑごま - 初コメント失礼します。この作品大好きで、最近また最初から読み返してます。飛沫さんの他の作品もよく読ませてもらってます!こんな大変な時期ですが更新頑張ってください!お体にも気を付けて! (2020年7月30日 22時) (レス) id: da1fba78c8 (このIDを非表示/違反報告)
飛沫(プロフ) - 雪月さん» コメントありがとうございます。面白いと言っていただきとても光栄です!!期末が終わったら更新が再開出来る筈なので少しお待ち下さい!!これからもご愛読お願いいたします! (2020年7月13日 21時) (レス) id: 5cd376c69b (このIDを非表示/違反報告)
雪月(プロフ) - 入社試験の方も読ませていただきました!面白いですね!忙しいかもしれませんが、更新頑張ってくださいね! (2020年7月13日 0時) (レス) id: f9f48108ec (このIDを非表示/違反報告)
飛沫(プロフ) - 朱鷺の砂さん» 読んで下さりありがとうございます。今学業の方が忙しく中々更新が出来てませんがどうぞよろしくお願いします。 (2020年7月2日 20時) (レス) id: 5cd376c69b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:飛沫 | 作成日時:2020年5月1日 13時