#148『幸せそうだった』 ページ13
「モンゴメリさん、珈琲を一杯」
「何で貴女が居るのよ!」
出前を届けて終えたモンゴメリの目の前にはかつての友人萩原朔がカウンターに座っていた。
黒い帽子を目深に被っているせいか、朔の目は見えないが、口元は楽しそうに笑っていた。
「否、モンゴメリさんの腕前を知りたいなと思いましたので」
モンゴメリが不機嫌な理由を知っているのか知らないのか、能天気に話しかけた。
モンゴメリはため息を付きながらも珈琲の豆を引き、カップに入れ朔に出した。
朔はそれを口に含む。程よい苦味が口一杯に広がり、塩が引くように失せた。
「･･････とても、美味しいです」
「でも、あの子猫ちゃんに駄目だしされたのよ」
「まあ、マスターの珈琲を飲みなれている常連の方々は足りない、と感じるでしょうね。
でも、僕は昔からインスタントコーヒーぐらいしか飲んだ事がないので･･････」
膨れるモンゴメリを宥めようと朔はフォローを入れた。
「後、僕は歓迎されて居ないようですね」
その言葉にモンゴメリは朔の顔を見た。悲しそうに朔の眉が垂れている。
「･･････違うのよ」
モンゴメリはもっと早く会いに来て欲しかったのだ。自分が会った数少ない友達に。
朔とモンゴメリが会ったのは少なくとも5年間前。それ以来会えて居なかったのだ。
「何故、もっと早く会いに来てくれなかったのよ?」
モンゴメリの消え入りそうな声に朔は目を見開いた。
･･････寂しかったんだな。
組合の中でモンゴメリはもしかしたら孤独を感じていたのかもしれない。
彼女もまたこの戦いのお陰で孤独から解き放たれた一人なのだ。
朔はここに来た本題を切り出した。
「僕の今の名は萩原朔です。覚えて下さいね」
「･･････貴女、裏切ったの? あのロシア帽を被った不健康そうな青年を」
･･････ロシア帽を被った不健康そうな青年、か
どうやらモンゴメリは朔が元々所属していた組織の詳細は知らないようだ。
「ええ、まあそうですね」
「凄く、貴女幸せそうだったわ。･･････今よりずっとね」
朔は目を見開いた。
･･････確かに、そうかもしれない
「まあ、そうかもしれないですね」
朔は苦笑いを零すしか出来なかった。
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飛沫(プロフ) - ゑごまさん» コメントありがとうございます。この作品を好きになってくれて嬉しいです!!他の作品も･･････感無量です。今日で定期考査も終了するので随時更新を再開したいです!!ゑごまさんも体調にお気をつけて下さい。 (2020年7月31日 7時) (
レス) id: 5cd376c69b (このIDを非表示/違反報告)
ゑごま - 初コメント失礼します。この作品大好きで、最近また最初から読み返してます。飛沫さんの他の作品もよく読ませてもらってます！こんな大変な時期ですが更新頑張ってください！お体にも気を付けて！ (2020年7月30日 22時) (レス) id: da1fba78c8 (このIDを非表示/違反報告)
飛沫(プロフ) - 雪月さん» コメントありがとうございます。面白いと言っていただきとても光栄です!!期末が終わったら更新が再開出来る筈なので少しお待ち下さい!!これからもご愛読お願いいたします！ (2020年7月13日 21時) (レス) id: 5cd376c69b (このIDを非表示/違反報告)
雪月(プロフ) - 入社試験の方も読ませていただきました！面白いですね！忙しいかもしれませんが、更新頑張ってくださいね！ (2020年7月13日 0時) (レス) id: f9f48108ec (このIDを非表示/違反報告)
飛沫(プロフ) - 朱鷺の砂さん» 読んで下さりありがとうございます。今学業の方が忙しく中々更新が出来てませんがどうぞよろしくお願いします。 (2020年7月2日 20時) (レス) id: 5cd376c69b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：飛沫 | 作成日時：2020年5月1日 13時
