【刀剣乱舞】これから、風が吹き始めそうなので 参

風が九吹き ページ10

私が話すまで待つつもりなのか、一言も喋らず


視線を私に投げるばかりだった







「......逃げてきた」








それに耐えれなくなってそう言うと


彼は少しだけ、目を見開いた








言い終わってから気づいた






私の今の状況が少しばかり、初代の審神者に似ているのだ



だから、きっと鶴丸は驚いた









......私もこのまま、行方不明の扱いになってしまうのだろうか









「ちなみに......経緯については聞いてもいいかい」





「私の過去を聞いた刀剣男士たちの目が怖くて、

私なんかが主になったらだめだと思った」









彼はじっと黙って、私の話を聞いてくれる






続きを言っていいものだろうかと迷ったが


どうせ、彼が本丸に戻れば自ずと知られてしまうことなのだ








「......私は人を殺した、という過去を持ってるの」








別にどう思われてもいい





今まで、彼らに黙っていた報いなのだ



罰なのだ








「そうかい」







しかし、彼は穏やかな笑みを浮かべた






出会った時の太陽のような笑顔とはまた違った、やさしい顔







どうしてそんな顔をするの、という疑問は喉につっかえて


うまく吐き出せなかった









「しかし故意に起きたことではないのだろう？



あのきれいになった本丸を見れば分かる





それに、それを誰かのせいにしない君の心が汚いわけがないだろう」









故意じゃない、たしかに事故だ



けど、あれは私のせい









鶴丸、私の心がきれいなわけがないんだ






過去を知られることで嫌われてしまうのが分かってたから


私は自分のことで、まともに彼らと向き合ってこなかった





知られないまま、あの場所にずっといたいと思っていた









「けど、逃げたのはいただけないな


今日はもう遅いじゃら、明日本丸に帰れ」




「ってことは、鶴丸も本丸に？」






「いや、君を送り届けるだけだ」




「なら、ここにいる」









`君なぁ`と困った顔をする彼





偶々とはいえ、鶴丸を見つけたのだ


燭台切と伽羅ちゃんに頼まれているんだから、ここで引くわけにはいかない









「鶴丸には助けてくれた借りがあるし、初代の審神者探すの手伝う」




「そーかい」









...........もし前任が見つかれば、私は要らなくなるのだろうか

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