風が三十四立ち ページ35
「ほぉ〜ら、飲め飲めっ!!!!」
「次郎、その辺になさい」
「......じゃあ乾杯でもするか」
「ちょっと、薬研お酒飲みすぎだよ?
それに......乾杯はさっきもしたじゃん」
お酒を飲んだり、隣にコップを合わせたりする姿は
祝いの会での当たり前な光景だった
しかし、それがやけに不自然に見えてしまったのは
__彼ら自身が楽しめていないから
それもそのはず
かく言う私も、その一人なのだ
明日、入院のために現代に行く私
けど、そこには`私が本丸に帰ってくる`という保証がないのだ
だからといって、彼らは私が現代の病院に戻ることを引き留めたりしないだろう
ここで暮らしてきて、彼らの優しさに何度も救われた
今だって
私のけがが`ちゃんとした病院で診てもらわないと治らない`から
敢えて、私を引き留めたりしないのだ
きっとこれは私が馬鹿なのでも、自意識過剰なのでもない
___ほんと、彼らの優しさは骨の髄にまで染み渡る
「......じゃあ、私は明日も早いしこの辺で」
「そうですか
......ではおやすみなさいませ、ぬしさま」
立ち上がって見下ろすと、箸を休めた彼が微笑んだ
口角は上がっているものの、それはどことなくぎこちなかった
バレバレだよ、小狐丸
でも気づかないふりをして、私は大広間を出た
このままあそこに居たら、どうにかなっちゃいそうだったから
「雲様、こんな急に決められてしまってすみません......」
「たしかに急だった
でも今更、どうこうできる話でもないんでしょ?
それにいつかは決めなくちゃいけないことだったんだから」
後ろを付いてくるこんのすけの気配を感じながら、審神者部屋を目指す
ひゅっと風が通って、思わず顔を上げると下弦の月が静かに縁側を照らしていた
雲に隠れず堂々と輝くその様は、私にはどこか遠くのことのようで
「そういえば、明日持っていくものとか準備しないといけませんね」
「そんなものない
私が持ち出すものは何もない
ここに来た時だって何も持ってなかった
......だってあの日、急にここに攫われてきたのだから」
冗談のように笑い飛ばしてみるも、どこか苦しかった
209人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アカネ(プロフ) - 三十九立ちの所で多分「お花」と書こうとしたと思うのですが、「お米」と書いております…!更新頑張って下さい、とても楽しく読んでいます…! (2018年9月8日 17時) (レス) id: e853e23932 (このIDを非表示/違反報告)
悠@ - 露草浅葱#絵描き同盟さん» お忙しい中ご返答ありがとうございます。そうですね、キャラヘイトとは異なる点が幾つかあると思います。それは私の非ですね、すみません。ですが、タグ削除等は行ってほしいとは思っています(タイトルの刀剣乱舞は消さなくても大丈夫です。) (2018年7月26日 13時) (レス) id: c35ccfc481 (このIDを非表示/違反報告)
悠@ - こんばんは、突然すみません。この小説はブラック本丸を元にした作品だとお見受けしました。しかし、ブラック本丸というのはキャラヘイトと言う犯罪になりますので、刀剣乱舞原作に関わるタグをすべて削除するか、小説自体を削除してください。 (2018年7月25日 19時) (レス) id: c35ccfc481 (このIDを非表示/違反報告)
槝 - 一気読みしました。主の正論は自分の事を棚にあげてると思いましたが前に進めている姿は良い。沖田組好きなので加州の話は読み応えあり、彼らが変に罵り合う事なくレア刀が出張る事もなく、刀剣が等しく出ていて大変楽しめた。応援してます。 (2018年7月1日 6時) (携帯から) (レス) id: 46e1741f78 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:露草浅葱 | 作成日時:2018年6月30日 14時