風が九筋 ページ10
「それは、、、そうですが、、」
と、私をちらりと見るこんのすけ
鶯丸というひとの言葉に判断が揺らいだらしかった
「なら決まりだな
たしか、雲といったか？
もうとっくにお前のことは本丸中に広まっている」
じっと鶯丸と目が合った
しかし、彼は何を思ったのかふっと笑うと手中の
湯吞みに目を落とした
「、、、お前はここでいつまで生きていられるのかな」
そうだ、ここではだれも守ってはくれやしない
ましてや、私はここに死にに来ているようなもの
、、、そんなこと最初から分かっていた
だけど改めて聞いて、思った
ここでは人の命は何とも思われていないということ
なぜだか、そのことを知って無性に苦しくなった
だけど私は口角を上げる
「分かった。精々、死なないように頑張るよ
、、、色々と教えてくれてありがとう、少し頑張ってみるわ」
上手く笑えたわからないけど
そのまま、こんのすけについて行って鶯丸は見えなくなった
「本当によろしいのですか？離れじゃなくて」
「いいんじゃないの？それにさっきの人が言ってたよ？
私がここに来たこと知れ渡っているって」
「、、、分かりました」
渋々ながらも了承してくれたらしかった
しばらく歩いていくと、ある一室にたどり着いた
「、、、ここが審神者部屋でございます」
神妙な顔で見上げてくるこんのすけ
そんな様子を見届けたのち
あちこちが破れた障子の襖に手を掛け、開くと中は悲惨な状態で、
思わず、一度襖を閉めて、、、、、なかったことにしてみた
「、、、雲様？どうされましたか？」
「ねえ、こんのすけ
本当にここに人が住んでいたの？」
「さようですが」
「、、、、」
仕方なく
もう一度開けて、中を覗き込んでみた
寝室兼、職務室らしく
広がったままの布団、木製のデスクと椅子があり、
それからＡ４サイズの書類があちこちに散らばっていていた
ここで審神者が死んだのだろう
そこら中に血痕が飛び散り
鼻を突き刺さるようなツーンとした鉄の香りが抜けてった
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作者名：露草浅葱 | 作成日時：2018年2月19日 12時
