風が十五筋 ページ16
「、、、では、いいですか?」
ゴクリ、とこんのすけの喉を鳴らす音が聞こえた
その声にハッとさせられ、目を開けるとそこには
やはり、ぼろぼろな障子
あの後、彼_薬研藤四郎と呼ばれた少年_が出ていったのと
ほぼ入れ違いにこんのすけが戻ってきて
巫女服、みたいなそんな和服を着せられた
白衣に緋色の袴を着させられ
人生で初めて、足袋を履くことになった
そのせいか、足のなれない感覚に意識がいってしまう
なんというか、落ち着かないのだ
「、、、こんのすけ、ここには何人、、いや、何振りいるの?」
さっきから、神妙な面向きで障子の中をずっと伺っているその背に
声をかけると、彼はゆっくり振り返った
「、、、、42振りにございます」
「、、、そっか。思っていたより多いね」
白衣の袂が邪魔にならないよう、少しまくってみる
殺されるかもしれない、そんなもしものために脇差もここにある
そう自身に言い聞かせ、息をついて、障子に手をかけた
「雲様、本当によろしいのですか?
いくら薬研様に`大広間`に来るよう言われたからといっても
今なら、引き返すことができます
それに、この本丸の皆様は人間を嫌っておいでで、、、」
「、、、でも、行くしかないでしょ?」
こんのすけが言い切る前に自分の言葉で覆ってしまう
私が殺される可能性があるかもしれないと言うつもりだった?
障子に手をかける
私は次にやって来る審神者のためのただの生贄なのに
なにを今更、心配しているみたいなんてこと言うのだろうか
どうして?
もう、私に死なないでなんて言ってくれる人はもうこの世にいないのに
こんのすけに言われた言葉が馬鹿みたいに、私の心に刺さるのは
襖をゆっくりと開けていく中、左腰の脇差に手をかけた
「、、、くれぐれも、死なないよう」
馬鹿みたい
死んでほしくないなら、最初から私を連れてこなければいいんじゃなかったの?
カチャ
小気味のいい音を立てて、鯉口を切った
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作者名:露草浅葱 | 作成日時:2018年2月19日 12時