7話 ページ7
リビングに戻った私は、緊張で跳ね出した心臓を落ち着かせていた。
いきなり見慣れないものを見せつけられ、キモいくらい動揺してしまった。
し、仕方ないじゃん、異性の裸なんて、幼い時にお父さんと風呂に入った時以来、見てないんだし…
と、聞かれてもない言い訳を悶々と頭の中で言っていると、ふと、床に落ちた携帯に目が留まる。
…あ、そうだった。
家についたら、救急に電話しなきゃいけないんだった…
私は携帯を拾い上げ、ロック画面を開く。
電話のキーパッドを表示して、119と打ち込んだところで踏みとどまる。
…いや、待てよ、これって救急でいいのか?
ここは、虐待されていると読んで189で児童相談所に連絡の方がいいのかな…
でも、彼はすでに成人していそうな見た目だったし、体つきも…と考えたところで慌てて頭を振る。
それよりも、110で警察を呼んだ方が…
とごちゃごちゃ考えている間に、風呂場の方からカラリと扉が開いた。
ひたひたとフローリングを歩いてくる音がしてそちらの方に顔を向けると、ゴミ捨て場にいた時より遥かに綺麗になった彼が佇んでいた。
置いていった服にもきちんと着替えており、ほっと一息付いたが、長い髪からは今もポタポタと水が滴っていることに気がついた。
「か、髪!
まだ濡れてますって…」
私は持っていた携帯を置いて彼のもとに駆け寄った。
握っていたタオルを拝借し、髪を拭いてやろうとして…サッと避けられる。
「…ッ……お前、何を考えている?」
目にも止まらぬ速さで避けられた私は、タオルを両手に持ったまま、彼の顔を見上げた。その彼は、ありえないものを見る様な目でこちらを見下ろしている。
「えっ…か、髪を拭こうと……
ごめん、急に触られるの嫌だった?」
「…は…………嫌?
……嫌なのはお前の方じゃないのか?」
「…………はい?」
どういうことか分からず首を傾げる。
すると、目の前の男も鏡合わせの様に首を傾げた。
???
お互い分かっていないことがありすぎて、話が通じないのだろう。
私はしばらく思案した後、ひとまず彼が体を冷やさない様に首にタオルをかけてやる。
「………ひとまず、そこに座って。
ちょっと話しませんか?」
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作者名:他人の空似 | 作成日時:2023年11月17日 23時