5話 ページ5
身に覚えのない言葉に頭を傾げつつ、それはさておき、気味の悪い部屋と評価されたことに少々心が傷付いた。
確かに何の面白味もない部屋だけど、置いてあるのは至って普通の家具ばかりだし、それなりに掃除はしているのだが。
「その…か、勝手にうちに連れ込んじゃってごめんなさい。
貴方の言っていることは良く分からないんだけど…えっと、ちょうばつ？とやらは、しないから…安心してほしい…です。」
「………"洗礼"？"神託"？それとも"生贄"か？」
物々しい言葉の連続。
一体何を言ってるのかさっぱりだが、完全に誤解されていることは確かだ。
「た、多分、どれも違いますね…」
「………」
「えっと…どうしたら信じてもらえるかな…」
「………」
完全に黙り込んだその人はじっと私の顔を見つめたままその場を動かない。
…かなり、警戒しているみたいだ。
ふと、長い沈黙と見つめ合いをしていたところを横槍に、軽やかなメロディが風呂場から流れてきた。
「……ｯ！」
「あ、お風呂沸いた…
あー、その、ひとまずお風呂入りません？」
「……おふ、ろ…？それも懲罰か……？」
「ちちち違います！！
もしかして、お風呂が分かりませんか…？
え、えーっと…
その、身体を綺麗にするところです！
さっきまでゴミ捨て場にいたせいで身体中汚れれてるだろうから…
さっぱりしましょうよ、ね？」
「……水浴び、か…？」
「まさに、それです、それ！
この先にその水浴びができるところがありますから。
ゆっくり汚れを落としてきてください。」
ちょいちょいと手招きし、風呂場まで歩いていくと、ものすごい警戒しながらも、後ろをついてきてくれた。
ガラリと風呂の扉を開けると、もわっと暖かい湯気が立ち込めた。
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作者名：他人の空似 | 作成日時：2023年11月17日 23時
