【gnsn】モラで落ちると思うなよ (ページ5)

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モラを払ったときページ5

「…ここが璃月か……」

　港に到着してすぐに、そんな言葉をポツリと呟く。思わず出た一言と言えばいいだろうか。見慣れた雪国とは違い、随分と彩り豊かで景色もいい。周りは高い山も多そうだな、という印象。確か結構栄えていて、モラのやり取りも多く、沢山の人が働いているのだとか居ないのだとか。

「…さて、どうするか」

　一先ずは璃月で出来たばかりの北国銀行へ向かうとするか。はたまた、土地勘がないから璃月の土地を覚えるために見て回るか。なにか困ったことがあればモラでも手渡せば対価に道案内くらいはしてくれるだろう。そんなことを考えていると、市場でピシリと固まっている女性を見つけた。

(……何やってるんだ、後ろの客がイライラしてるじゃないか。喧嘩に発展しそうだけど大丈夫かな。店主もどことなく顔が困って────ああ、モラがもしかして足りないのか？)

　腕を組んで考え込み、今一度その光景を一瞥する。やはり女性は「うー…」と唸り、財布らしきものを見つめて困っていた。このまま後ろの客が痺れを切らして喧嘩に発展するのも面白いが、モラに困った彼女を見て見ぬふりをするのも見つけてしまった身としてはどうかと思うので、仕方無しにと身を乗り出す。

「これが欲しいのかい。店主、値段は？」
「1万モラだ」

　ひょっこり。女性の横に立って店主に聞けば、値段はきっかりときりのいい数字の1万モラ。なんだ、別にそこまで困る金額じゃないな、と懐からモラの入った袋を取り出す。

「おや、きっかり1万なのは値切りされたからかな？……はい、1万モラ」
「毎度あり！」
「……えっ？」

　ニコニコの店主。その裏には"払ってくれてよかった"と安堵した顔も混ざっていそうだ。対し、女性は"何が起きたかわからない"とでも言いた気な驚いたような顔でこちらを見上げた。

「ん？どうしたの、ホラ。早く商品を持って。次のお客さんがつっかえてるよ？」
「あっ……ハイ」

　言われるがままに慌てて商品を持ち、横に退く女性。未だに困惑しているのか、「あ…、えっと。ありがとうございます…決して高くない金額……」としどろもどろで伝えてきた。