モラをそう簡単に渡そうとしないで。 ページ4
「お会計、二名様で2万4千モラになります」
「2万4千モラ……にまッ……、!?」
「じゃぁ3万モラでいいか。お釣りはこっちの女性に渡してあげて」
「かしこまりました」
「んぇっ!!!!?」
何を言っているんだろうタルタリヤさん。頭イカれてるのかな?
率直にそう思った。コース料理は元々高いのは知っていたが、正直侮っていた。1万軽く飛んで2万行ったよ驚愕だよ。私の返済した1万モラがあっさり溶けてった。ナンテコッタ。と、心のなかでなんとも言えない感情と一緒に軽いパニックを起こす。しかもこの男、お釣りを私に渡してあげてと言わなかったか?「お釣りは要らないよ」とかではなく?何故??
「だってキミ、わざわざ危険な野山にまで赴いて食材を手に入れようだなんて!モラに困ってるんだろう?」
「たっ……、確かに困ってはいますけれど」
彼の鋭い指摘に思わず口を噤む。正直家計はまぁ、そこそこ厳しい。両親共働きで他国に居て、偶に手紙が来る程度。安否確認が出来るから良いものの、帰ってこられないのは結構寂しくて。そんな両親に対してモヤモヤとした感情が募り、つい「仕送りはいいから!自分で家の家賃も払う!」といったが最後、とても苦労をしている。今は軽いアルバイトで家計を担っているものの、食費はなるべく安いほうが良くてそこらに生えてるスイートフラワーとミントを使ったご飯にしているのも事実。先日買い物にでかけた際は給料日だったので浮かれていた結果、この人と出会ったというわけだ。
「ここの料理も全部初めて口にしたみたいだしね、すごく美味しそうに食べてたよ」
「恥ずかしいので言わないでください!美味しかったです!!」
「ふはっ、素直でいいね。そのまま素直にお釣りは貰っておきな。また再会したときにお金がなくてその場で出すのは苦労するからね」
「もうありませんよそんなこと…!」
彼の言葉に丁寧に返しておくと、お会計の人からお釣りを渡される。「結構です!」と断っていると、その会計の男性から「お嬢ちゃん、ここは素直に受け取るべきだよ」と分けのわからないことを言われた。思わず「は?」と呟くと、会計の人は口元をこれでもかというけらいに三日月にして笑い、耳打ちをしてきた。
「きっとこの男の人、アンタに気があるね」
「は──────、?」
「そうじゃなきゃわざわざコース料理なんて頼まないだろう」
「いやいやいやいやいやいやいや」
まだ出会って二回目なんですけど…!?
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作者名:無胤 | 作成日時:2022年12月2日 0時