一体どのくらいのモラ消費なのだろうか。 ページ3
「あの」
「ん?」
「なんで私達は今万民堂でコース料理を食べてるんでしょうか」
「俺の小腹が空いたから」
小腹が空いたから頼むのがコース料理って違う気がする。そんな脳内疑問を浮かべながら、運ばれてきた料理を見つめる。ご丁寧に私の分までしっかりと用意をされているが、果たしてここの料理は一体いくらなのだろう。懐、今温かいっけ。と、遠い目になるのを他所に、彼も別の意味で遠い目になっているようだった。
「…どうしたんです?"小腹が空いた"のでは?」
「あ───いや、うん。そう、なんだけどね……」
こちらの質問に、しどろもとろ、困ったように「はは…」と笑ってなんとも言えない顔で返す彼。一体どうしたのだろう、と首を傾げる。彼はポツリと「ここも箸かぁ……」と呟いたのを私は聞き逃さなかった。
「箸────え、箸…あ、異国の方でしたっけ」
「…うん、そう。実は箸に慣れてなくて」
「……苦手?」
「………まあ」
気まずそうに俯きながら、小さく頷く彼。なんだか萎れてて少し可愛い。つい、「ふふっ」と笑うと「笑わないで!」と顔を赤らめながら客の迷惑にならない程度の声で言ってきた。
「すみません、モラがあって戦闘ができてイケメンなのに箸が苦手と思うと何だか……」
「褒めてくれてるはずなのに全く嬉しくない!璃月は目新しいものが多くて食べ物も美味しいけど、練習しても変な持ち方になるし困ってるんだ!」
「練習…ふふっ……」
「仕事の派遣でここに飛ばされたんだ、俺は悪くない!」
ギャンギャンと鳴き喚いている彼を見て、更に笑いが込み上げてくる。先程の宝盗団への恐怖は消え、肩の荷も自然と降りた。
「はぁ、改めてモラだけでなく助けて下さりありがとうございました。私はAと申します」
「…ああ、名前を伝えてなかったね。俺はタルタリヤ。よろしく、お嬢ちゃん」
「お嬢ちゃん……なんか言われなれないのでやめてほしいです……」
「え?そう?……うーん、じゃぁ姫君?」
「なんで!?」
あの見た目と声で"お嬢ちゃん"呼びはゾワゾワするなぁと感じていると、今度は"姫君"と呼んできた彼─────、タルタリヤ…、さん。
「ずっと他の人に関してはお嬢ちゃんや少年呼びだったからね、別の呼び方となると難しくて」
「普通に名前で呼ぶのは?」
「敬称は大事だろう?」
「…大事ですけど」
意外と真面目なんだなぁ、この人。
モラをそう簡単に渡そうとしないで。→←再会はモラを盗まれそうになったとき
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作者名:無胤 | 作成日時:2022年12月2日 0時