【短編集】ピーチネクター (ページ24)

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「 ...Aって彼氏とか、居んの？」

私の隣の席の棚澤くん。

この子は私に恋してる、絶対。

だって休み時間にこんなこと聞いてくるんだもん。

『いや、いないけど』

「ふーん」

........え？

「ふーん」だけ？

『また非リアだって嘲笑うのか』

「被害妄想激しすぎです」

そうニコニコしてる棚澤くんを見てるだけで

なんだか不思議な気持ちなる。

ホントに棚澤くんは私の事好きなのか？

ここにきて疑惑が生まれた。

好きだったら「よかった」感出るじゃん。

それを「ふーん」なんていう

微妙な相槌(？)で終わらせやがって。

ここまでのは全て私の妄想だったとでもいうのか。

『棚澤くんは、いるの？』

「いや、いないけど」

『 .......けど？』

その先を聞きたい気持ちと聞きたくない気持ちが

心の中でグルグルしてる。

なんでこうも恋は難しいんだろう。

さっきやってた数式の方がよっぽど簡単だし

受験の方がよっぽど残酷じゃない。

「気になるヤツはいるよ」

真っ直ぐ私の瞳を見つめる棚澤くんの

その純粋すぎる瞳を見つめ返せなかった。