脱走１ ページ10
Aside
ふと目覚めると、薄暗い部屋の中に
窓から日の光が差し込んでいた。
ベッドの上で起き上がると、
ジャラっという音がする。
左手首に付けられた黒い鉄のベルトと、
そこからベッドに伸びている長い鎖を見る度に、
やっぱりまだ連れ去られたままなのだと、
これが現実なんだと落ち込んでしまう。
もちろん、どうやって逃げるか
あれこれと考えてはみた。
家の鍵を使って帰れば、
誰かいるかも！とか。
そう一瞬でも思った自分が馬鹿だった…
私の首からは家の鍵も、金のネックレスも、
ポシェットすら消えていた。
恐らく、連れてこられた時
既に疾風に奪われてたんだと思う。
どうしよう…
ここから逃げようとすれば、
慎太郎に何をされるか分からない。
だから、まずは慎太郎を助けなきゃ。
でも、疾風に操られている慎太郎が
どうやったら目を覚ましてくれるのか…
う〜んと考えてみるけど、
何も考えが浮かばない。
キョロキョロと部屋を見渡すと、
扉の前には、お盆に乗った
昨日の夕食が置いてあった。
でも、全く食欲が湧かなくて、
ほとんど何も食べていない。
何か変なものが盛られていそうで、
食べようとも思えないし。
あ、でもそっか。
ここである結論に達した。
とにかく、
この部屋を抜け出さないと
慎太郎も助けられない。
ということは、
扉に鍵が掛かっている以上、
逃げるチャンスは
食事が運ばれてくるタイミングだけ。
食事は、衛兵っぽい人が
扉を少しだけ開けて床に置いていく。
よし。
その時を狙って、作戦を考えよう。
私はまた物が無い部屋をグルグルと回りながら、
少しでもその時に使えそうな物がないか
探していった。
そして、その時が来た。
ガチャガチャと音がして、
扉の鍵が開けられる音がする。
私はキューを逃がした時みたいに、
扉の陰に隠れて息を潜めていた。
扉が少しだけ開くと、
衛兵はチラッとベッドの方を見た。
私は予め枕と布団を使って、
あたかも私が寝ているかのように
ベッドの上をこんもりとさせておいたのだ。
異常無しと判断したのか、
衛兵は私が食べなかった
昨日の夕食を片付けようと
床にしゃがみ込んだ。
今だ！
ゴン！
私は持っていたベッドの脚を
思いっきり衛兵に振り下ろした。
さっき、ベッドの脚の一つを外して
持っていたのだ。
衛兵は「ぐぁっ！」と声を上げて
その場に倒れて気絶した。
私は“ごめんなさい！”と心の中で謝りながら、
衛兵のベルトから鍵の束を奪った。
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こあらっこ(プロフ) - さくらさん» さくらさんにまたコメントして頂き本当に感謝です！嬉しいです〜（泣）お待たせしてしまい申し訳ございません、近々アップ出来る様に頑張りますね！いつも楽しく読んで頂いてるとの事で本当に嬉しいです！ありがとうございます！これからもよろしくお願い致します！ (2021年3月7日 15時) (
レス) id: e1db37f72a (このIDを非表示/違反報告)
さくら - 楽しく読んでいます。忙しいと思いますが更新楽しみにしています。 (2021年3月7日 14時) (レス) id: 63aab54572 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こあらっこ | 作成日時：2021年2月25日 16時
