黒の憂鬱 ページ31
北斗side
あぁ…もう…
あがいても無駄なんだろうなぁ…
もう慎太郎の目が
キラッキラしちゃってるもんなぁ…
俺はまたいつものウッドデッキで
ソファに腰かけている。
今朝は曇り空で、
午後からは雷も鳴るらしい。
その予報は当たりそうだ。
先ほどから吹く風は湿り気を含んでいて、
ぬるっと俺の頬を撫でていく。
その風が吹き抜ける方向には
「あるチラシ」を俺に見せながら
少年のような好奇心を剥き出しにしている慎太郎が
ラグの上に座っていた。
慎「ねぇいいでしょ！？
北ちゃんお願〜い！！」
慎太郎が上目遣いで見てくる。
俺は「はぁ〜っ」とため息をついて
額に手を当てながら考える。
どうすれば慎太郎が諦めるか…
北「…俺たちにはまだ早いんじゃないの？
もう少し経験を積んでから…」
慎「それ去年も言ってたじゃん！！
俺たち今月のハンター報酬同率3位だよ！？
もうそろそろ大会出よ〜よぉ！」
…だめか…
慎太郎が手に持っているチラシ。
そこにはデカデカとした文字で
【我武者羅！ハンター武道大会！！】と
書かれていた。
慎太郎はこの大会に出て
腕試しをしたいらしい。
確かに、俺たちはいつも魔物としか戦わないから、
実際どれくらいの戦闘能力なのかがわからない。
慎太郎は実戦でも、本当に強いと思うし、
俺はバディとしての慎太郎を信頼している。
だから大会に出れば、
それこそ優勝も狙えると思う。
ただ…
俺は大会に出る理由がないんだよなぁ…
確かに優勝賞金は欲しい。
でも今もそこまで不自由はしていない。
だからハッキリ言って
「面倒くさい」というのが俺の本心。
今までも毎年
何かに理由を付けて辞退してきた。
若すぎるとか経験が少なすぎるとか
なんとかかんとか…
でも残念ながら
俺はもう18で慎太郎は16になったし、
大会にはもっと若い奴らもいっぱいいる。
経験で言えば俺たちは
ベテランとまではいかないまでも、
役所から一目置かれているのは
自覚している。
更にはついに今月、
ハンター報酬で3位になっちゃったもんだから、
ハンター専門雑誌なんかから
取材の依頼も来てしまっていた。
(もちろん面倒くさいから全部断った)
あ、ちなみに俺たちの報酬は
必ず折半する約束だから、
俺と慎太郎は同率3位なのよ。
…とまぁ、話が逸れたけど
慎太郎を説得するほどの言い訳が
もう底を尽きていた。
そして目の前には
「出るよね！？出ますよね！？」と
物凄い顔面の圧力で俺に問いかける慎太郎…
北「はぁ〜…」
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作者名：こあらっこ | 作成日時：2020年6月30日 22時
