優秀な軍医は退職して一般ピーポー ①【鋼の錬金術師】 (ページ9)

今日:12 hit、昨日:14 hit、合計:27,817 hit

8 ページ9

今日も暗くて静かな病院にいる
兄さんが眠っているから、病室を出て屋上に出る。

月が綺麗だな･･･。

ｺﾂｺﾂｺﾂ

「･･･あれ」

ｱﾙ「あ、こんばんは」

「まだ起きてたんですか、体壊しますよ」

ｱﾙ「先生も壊しますよ、医者なんだから寝ないと」

「私はいいんだ、大人だから･･･」

柵によりかかって、眼鏡を拭き始める
眼鏡しててわからなかったけど以外と綺麗な人なんだな。

「なんでここに？」

ｱﾙ「寝れなくて･･･」

「あらら、まあそんな夜はありますよね」

ｱﾙ「そう、ですね」

「その鎧･･･重くないの？」

ｱﾙ「え？あ、まあ･･･僕鍛えてますから」

「あははっまあ鍛えてなかったら、着れないか」

僕の中身を知らないこの人からしたら、鎧をまとってるただの人なんだろうな。
この人からは･･･どんな風に見えてるんだろう、怖いのかな。

「14歳か･･･旅してるの？」

ｱﾙ「はい、ちょっと探し物を」

「いいなぁ･･･楽しそうだ」

ｱﾙ「そんなこと、危ない目にもあったりしますから」

「そうだね、でも自由じゃないか」

ｱﾙ「そうかもしれない」

欠伸をして柵から離れる
一歩扉の方へと踏み出して、振り向いた。

「その自由に生きれる心が羨ましいよ」

苦笑いをして戻っていく
羨ましい･･･か、僕も肉体のある君が羨ましい。

空洞のある僕とは違って･･･。

「おやすみ」

ｱﾙ「･･･おやすみなさい」

ｶﾞﾁｬﾝ

「さあ･･･見回ってから寝ますか」

見回りを終えてから仮眠室へと入る。
この仕事は嫌いじゃない･･･けれど、やはり苦だと思うことはある。

軍医よりは楽･･･。

けど･･･やっぱり、人の死に立ち会うのは怖い。
治せない悔しさ、泣いて崩れる遺族。
瀕死の状態でくる患者だっている。

直せない。

けど時々奇跡が起きる。
もう手遅れだって時でも必死に心肺蘇生をすると、息を吹き返す奇跡。
まだ生きたいんだって心臓が動く。

〝絶対に生かしてみせる〟

そう思ってずっと治療を続ける。
泣いて喜んで感謝する人を見ると･･･やっぱりやってきたことは間違いじゃないんだなって。

そう感じる。

「おやすみ･･･」

目を瞑って黒い空間を見る。
私が強ければ軍人になれたのだろうか

私よりも若いリザさんはまだ軍人なんだろうか･･･。
あの人好きな人のために戦い、一生を注ぐ。