優秀な軍医は退職して一般ピーポー ①【鋼の錬金術師】 (ページ36)

今日:6 hit、昨日:14 hit、合計:27,811 hit

35 ページ36

「お加減どうですか」

夜の検診で一人一人を見ていく中。
最後の病室に来る。

ハボックさんは寝たきりの中、トレーニングをやり続けている。
と言っても軽いヤツだが･･･。

「あんまり無理しないでください」

ﾊﾎﾞ「こうでもしなきゃ落ち着かねぇんだよ･･･」

「そうですか･･･ちょっと失礼します」

汗を軽く拭う
頼まれたからには最善を尽くす。
リハビリは死ぬほど･･･いや、死んだ方が楽なくらいにきついメニューで組んである。
食事もそれに見合った物を提供しなきゃいけない。

それに着いてこられるなら･･･。

ﾊﾎﾞ「･･･俺なんかの相手してていいのかよ、他に山ほど患者はいるだろ」

「えぇ･･･けど、頼まれたので」

ﾊﾎﾞ「誰･･･ってまあ、大佐しかいないか」

「お察しの通りです」

深く溜息をつきつつも、その目は光宿していた。
諦めていない、強さを持った瞳だ。

諦めないなんて簡単に口では言えるけど、やっぱり心からは出ない。
どこかで、もう辞めたい･･･諦めてしまって楽になりたい。

そんな言葉がよぎる
それを無視して前を向けるのは信じてくれる人がいるから。

「･･･強いですね」

ﾊﾎﾞ「こんなやつのこと褒めても何も出ねぇぞ」

「別に欲しいわけじゃありません･･･羨ましいんです」

月明かりでひかるカーテンをあけて、窓を開ける
澱んでいた空気が入れ替わり、冷たいものが中に入ってくる。

「諦めないでなんて言いましたけど、私だって諦めたくなるし迷うことなんて沢山あります
けどハボックさんは強い目を持っている･･･それが羨ましいんです」

ﾊﾎﾞ「･･･みんなが待っててくれてるからな」

「･･･ハボックさん」

ﾊﾎﾞ「ん？」

「賢者の石を使えばその足すぐに治るんです･･･」

ﾊﾎﾞ「！」

「もし･･･もしもです･･･私の命一つで貴方の足が簡単に治るなら、試してみたいですか？」

窓際に立ち、振り返る。
もしYESなら私は即刻賢者の石を作り、彼に渡すつもりだ。

そんな深い意味とは知らないであろうけど･･･。

ﾊﾎﾞ「･･･いらねぇ」

「どうしてです？元通りになれるのに」

まるで私は悪魔だ。
悪魔の囁きで誑かしているように思える。

本音が聞きたいんだ。

ﾊﾎﾞ「元通りでもあんたがいない」

「えっ･･･」

ﾊﾎﾞ「だいぶ･･･あんたに絆されちまったからな、いてくれなきゃ困る」