147：期待の眼差し ページ5
，
イデア｢ホントに非効率的、前時代的、わざわざ生徒のこと使いっ走りにして男しかいない寮の中飛び込ませて、万が一にでも億が一にでも酷い目に遭うって考えなかったわけ？いくら軟弱者の集まりとはいえ相手は女の子なんだからさぁ。君も災難だったね、怖かっただろ意味わかんない事ばっか言う男どもの中で待機させられて。次からはこんな寮入ってこなくていいから。帰っていいよ、じゃ。｣
踵を返し部屋へ戻っていく。
それは、私の想像した、陽気なハデスの人柄とは正反対の暗さで。
彼の心配していた事など、何も考えずに突っ走ってきた自分が恥ずかしくなるほどの正論で。
こんなにはしゃいでいるのは自分だけだと、思い知らされてるようで。
学園長の評判も下げてしまって、申し訳なくて。
私は顔を真っ赤にして寮を出ていった。
オルト｢ユウさん！｣
｢在学中に女子の制服を見る事なんて諦めてましたぞ｣
｢可愛いなぁ、しかも優しいなぁ｣
ユウのいなくなったイグニハイド寮。
オルトは、兄の厳しい物言いにローディングした。
この学校では異色の、女の子の生徒。
珍しい真っ黒の髪の毛に、オルトのフェイスフォルムに負けないくらいくりくりの瞳、優しい声。
兄のことを、初対面で｢天才なんですね｣と褒めてくれた、少し変わったお客さん。
兄を最初に見た時のあの目。
確かに表情は愛想笑いだったけど、心拍数や、瞳孔の開き方から、本物の喜びを感じ取れた。
何故か、まではわからない。
きっと根拠もなく、暖かい人なのだと信じきっていたのだろう。
オルト｢………………っもう！！！あんまりだよ！！兄さん！！！
………………兄さん！？｣
急いで兄の部屋まで行きドアを開ける。
兄の厳しすぎる発言を不満を言おうと、声を荒らげて自室に入ると、そこには1つの屍が落ちていた。
イデア｢……………………｣
オルト｢し、死んでる…！！！｣
蚊の鳴くような声でぶつぶつと｢やってしまった｣だの｢自己紹介すらできなかった｣だの｢拙者は陰キャで童貞です｣だの反省なのか自暴自棄なのかわからない言葉を連ねている。
ユウから受け取ったメモ用紙を握りしめ、後悔と自責の念に駆られている兄。
オルトは溜息を吐いて、とことん人馴れしていない兄の代わりに、ユウへの謝罪文をデータ化した。
，
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 80人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鈴木(仮) | 作成日時：2024年3月3日 10時
