【ワールドトリガー】ふぁっきんないすでぃ(・Д・)

episode２２ ページ23

歯が肉に食い込み、乾いた唇を裂いていく。

Aの口の端から血液が垂れ、頬を伝った。

それは顎を垂れ、首を垂れ、やがて白いシーツの上に、滲んだ模様を生む。


「さき!?何してるの!!」


小南は動転し、Aの顎を掴んだ。

びくっ、と、Aの身体が跳ねる。

Aは小南の手に抵抗はしないものの、嫌悪と恐怖を顔にうつしていた。


「布を噛ませろ。舌を噛むかもしれない」


忍田が、するりとネクタイをほどいた。

嵐山がハッと我に返り、忍田からネクタイを受け取る。


「ミサ！何してるんだお前!!」


怒鳴り、許可なく小南を押しのけた。

そして、血まみれのAの口をこじ開け、その中にネクタイをつめる。

Aは目を見開き、喉が千切れたような叫び声をあげた。


「嵐山さん！近寄るな!!」


血で染まるネクタイを見て、歌川の胸にむかつくような感情が広がった。

思わず、叫び、嵐山を羽交い閉めにする。


「う、歌川!?」


Aの傍で呆けていた烏丸が、目を丸くして、歌川の足を掴んだ。

構わず、歌川は嵐山をAから引き離す。


「嵐山さん、彼女はあなたに怯えているんだ!!」


歌川は、嵐山を完全に離し、叫んだ。

小南は一瞬、嵐山と歌川を見て、すぐにAに視線を戻す。

Aはネクタイを吐き出し、喉に流れ込む血にせき込んでいた。


「……は？いや、俺はミサのいとこだぞ？」


うろたえ、嵐山は焦点の合わない目で歌川を見つめる。

歌川はしっかりと、嵐山を見返した。

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