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「 さっきからなんだよ、その一未さんって」

『 いや、流石に呼び捨てはなぁって ⋯ 伊吹君、機捜どう?初めてなんだよね? 』





目の前の彼に問いかければ、驚いたような顔。

あれ、初めてだから、って言ってなかったっけ。

戸惑っていれば、ぱっと明るい表情に。





「 ちょー良い仕事! 」

『 それは良かった、安心 』

「 ⋯ 伊咲さん、優しーね 」

「 志摩とばっか話してたから身に染みるわ〜 」

『 志摩の後に話す人ってみんな優しいよね 』

「 目の前でよくそんな口叩けるな 」

『 やだなぁ、愛ですよ、一未さん 』

「 そうそう、愛だよ!ラブ〜 」





後ろから肩を組む伊吹君の手を志摩がうざったらしく払う。

ラブの発音 ⋯ ってかこの場合はライクじゃ???

まっ、何より本当に良い人。

今も手を払われたのに、にこにこで志摩と話してる。





「 ⋯ なんだよ 」

『 いや?仲良くなれそうだな〜って 』

「 なら俺じゃなくて伊吹でも見とけ 」

「 伊吹“でも”って酷くない? 」

「 ⋯ 」

「 もーさぁ ⋯ あっ伊咲さん伊咲さん、俺もそれ思ってた!伊咲さんちょーいい人だもーん 」





屈託のない笑顔、言葉にも嘘はない。

⋯ 理由も何も無いただの勘だけど。

こういう時の勘を私は信じたい。





『 伊吹君こそ、ちょー良い人 』

「 ふっ、真似しないでよっ 」

『 でも嘘じゃないのは伝わったでしょ? 』

「 うん、完璧伝わった、ばっちし〜 」





ぐっ、と立てられた親指に同じように返す。

そして、何度か聞こえるため息の発生源を肘でつつく。





「 なんだ 」

『 ため息ー幸せ逃げるよ? 』

「 回収しに行く? 」

『 行っちゃう? 』

「 やめろ、お前らバカ2人に頭抱えてんだよ 」





顔を上げたかと思えばしっぶい顔。

怒りすぎ ⋯ もう若くないんだから皺になるぞ。





「 バカ2人って ⋯ 酷いよね、伊咲さん 」

『 酷いよね、伊吹君 』

「 うるさい、バカは一人で十分だ 」

『 よしっ、もう2人でコンビ組もうよ、伊吹君 』

「 バカコンビ? 」

『 それっ!仲良くやろ 』

「 いぇーい 」





2人で盛り上がれば志摩の顔はより険しく。

まだ険しくなれるの?あの顔から?

びっくり人間ですか?一未さん。





「 ⋯ 仲良くなりすぎね 」

「 仲悪いより良いじゃん?仲良しの方が 」

『 そーだよ、ゆづちゃん 』

「 “ゆづちゃん”? 」

『 あっ 』





やらかした、と手で口を覆うが時すでに遅しだ。





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作者名:たなか | 作成日時:2023年12月9日 18時

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