# 5 ページ6
.
「 さっきからなんだよ、その一未さんって」
『 いや、流石に呼び捨てはなぁって ⋯ 伊吹君、機捜どう?初めてなんだよね? 』
目の前の彼に問いかければ、驚いたような顔。
あれ、初めてだから、って言ってなかったっけ。
戸惑っていれば、ぱっと明るい表情に。
「 ちょー良い仕事! 」
『 それは良かった、安心 』
「 ⋯ 伊咲さん、優しーね 」
「 志摩とばっか話してたから身に染みるわ〜 」
『 志摩の後に話す人ってみんな優しいよね 』
「 目の前でよくそんな口叩けるな 」
『 やだなぁ、愛ですよ、一未さん 』
「 そうそう、愛だよ!ラブ〜 」
後ろから肩を組む伊吹君の手を志摩がうざったらしく払う。
ラブの発音 ⋯ ってかこの場合はライクじゃ???
まっ、何より本当に良い人。
今も手を払われたのに、にこにこで志摩と話してる。
「 ⋯ なんだよ 」
『 いや?仲良くなれそうだな〜って 』
「 なら俺じゃなくて伊吹でも見とけ 」
「 伊吹“でも”って酷くない? 」
「 ⋯ 」
「 もーさぁ ⋯ あっ伊咲さん伊咲さん、俺もそれ思ってた!伊咲さんちょーいい人だもーん 」
屈託のない笑顔、言葉にも嘘はない。
⋯ 理由も何も無いただの勘だけど。
こういう時の勘を私は信じたい。
『 伊吹君こそ、ちょー良い人 』
「 ふっ、真似しないでよっ 」
『 でも嘘じゃないのは伝わったでしょ? 』
「 うん、完璧伝わった、ばっちし〜 」
ぐっ、と立てられた親指に同じように返す。
そして、何度か聞こえるため息の発生源を肘でつつく。
「 なんだ 」
『 ため息ー幸せ逃げるよ? 』
「 回収しに行く? 」
『 行っちゃう? 』
「 やめろ、お前らバカ2人に頭抱えてんだよ 」
顔を上げたかと思えばしっぶい顔。
怒りすぎ ⋯ もう若くないんだから皺になるぞ。
「 バカ2人って ⋯ 酷いよね、伊咲さん 」
『 酷いよね、伊吹君 』
「 うるさい、バカは一人で十分だ 」
『 よしっ、もう2人でコンビ組もうよ、伊吹君 』
「 バカコンビ? 」
『 それっ!仲良くやろ 』
「 いぇーい 」
2人で盛り上がれば志摩の顔はより険しく。
まだ険しくなれるの?あの顔から?
びっくり人間ですか?一未さん。
「 ⋯ 仲良くなりすぎね 」
「 仲悪いより良いじゃん?仲良しの方が 」
『 そーだよ、ゆづちゃん 』
「 “ゆづちゃん”? 」
『 あっ 』
やらかした、と手で口を覆うが時すでに遅しだ。
.
97人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:たなか | 作成日時:2023年12月9日 18時