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「 離れろ!伊吹! 」
“伊吹” ⋯ ってこっち!?!
えぇ ⋯ もう一人の相棒、だよね。
ふと、見ればゆづちゃんの腕が前に、その腕に触れる。
大丈夫、と言葉には出さず伝えれば下ろしてくれた。
「 うわっ、ちょ、なになになに 」
伊吹はというと、首を掴まれ奥へと連れ去られていった。
え、あれ志摩だよね? ⋯ 久しぶりもなしかい。
何回も目合ってたのに、薄情な男め。
志摩の姿を目で追っていると、陣さんが向かってくる。
と、後ろには恐らく九重。
「 久しぶりだな、A! 」
『 陣さん!久しぶり! 』
大きな声に負けじと声を張る。
差し出された手を強く握れば、より強く握り返される。
変わりのなさに、再開の喜びとは別の笑いが込み上げた。
「 ははっ、元気そうだな 」
『 陣さんこそ!力強い! 』
「 どうだA、調子は 」
『 元気です!鍛えてましたよ! 』
「おぉおぉ!そりゃ頼りになるな!」
笑いながら、背中を叩く陣さんは本当に昔のまま。
先程から感じる視線の先を見れば、目が合った。
『 初めまして!ごめんね、突然 』
『 伊咲Aです、よろしく 』
挨拶をして、手を出す ⋯ けど反応はなし。
ん?耳聞こえない?
「 ⋯ 耳は聞こえますよ 」
一応、と手話での挨拶を終え一言。
いや、なら先に言って ⋯ ってか無視しないでよ。
「 それに、伊咲さんのこと知ってます 」
変わらないトーンでまたも一言。
⋯ はぁっ?!
『 知り合っ、ちがっ ⋯ えっどこで ? 』
知らない知らない。
だって九重って ⋯ 警察庁の幹部の苗字でしょ?
そんなのがあきる野に来た覚えは無い。
私が何年あきる野にいたと思ってるんだ。
「 いえ、初対面ですよ、俺が知ってるだけです 」
「 元捜査一課の方ですよね?志摩さんと同じ 」
『 ⋯ 』
「 お二人とも優秀な方だったとか 」
『 ⋯ “だった”ね 』
“だった”なんて嫌味たっぷりの過去形を復唱する。
失礼な人、初対面なのに、この人。
⋯ これ絶対志摩にも言ったでしょ。
『 1個訂正 ⋯ 志摩は今も優秀だから 』
『 ⋯ 初対面相手に挨拶もできない貴方より 』
⋯ 大人気ないのは分かってるから!
両隣から向けられる痛い視線に心の中で反論する。
どうせ噂聞いてこんなこと言ったんだ、ホントみんなバカ。
「 志摩さんなら昨日、警察車両廃車にしましたけど 」
『 ⋯ 』
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作者名:たなか | 作成日時:2023年12月9日 18時