# 16 ページ17
.
「 ⋯ 陣馬さん 」
「 対象の車両に紫色の花、恐らくショウブの花束です 」
「 購入店舗はフラワーショップ松木 」
「 前足、探ってください 」
「 ⋯ はい 」
『 えっ、使わないなら返して ⋯ 』
何故かこちらに返されたスマホ。
隣にいるのに ⋯ と軽く覗き込めば、何やら調節中。
作業が終わるまで待つか。
なんて考えてる間に音声が流れ始め、すぐさまメモを取る。
[ 親父は ⋯ 僕が何をしても気に入らないんです ]
「 おっ、来た来た来た 」
ポツポツと語られる、身の上話に耳を傾ける。
家庭環境が劣悪、原因は父親。
高校卒業後、逃げるように上京 ⋯ するも、上手くいかず。
突然、中学の同級生である岸から連絡。
そこで仕事の紹介を、なんとか生活ができるように。
で、岸は自分の恩人だ ⋯ と。
初っ端から良い情報ばかり、有難いな。
「 へぇ、良いやつじゃん 」
『 だね 』
今のとこ、岸はただの良い奴 ⋯ だけど。
話しぶり的に一緒に勤めてたはず、今はどこにいるのか。
問題はそこ。
『 ⋯ 』
「 ⋯ A、憶測立てすぎるなよ、頭が固くなる 」
『 んー 』
一度、スマホから目を離し外を見る。
あらぁ、山の中 ⋯ って今どこよ。
「 御殿場を越えて、国道138、富士山田方面へ向かいます 」
山梨! ⋯ これまた謎が増えた。
と、早速回転を再開しようとしたんだけど頭を止める。
⋯ 志摩の言う通り、憶測の立てすぎはNG。
[ みんなパワハラの被害に遭ってて ]
[ あんまり酷いから、岸が怒って専務を殴ったんです ]
「 そりゃ殴りたくもなるわ 」
[ 殴っていいわよ、そんなパワハラ上司 ]
「 いや、うん、だよな 」
「 殴っていいよ、いいよ 」 『 いや、良くないよ 』
おばちゃんと会話を始めた伊吹君。
とんでもない発言に思わず突っ込む。
『 暴行は一発アウト 』
「 ⋯ だな」
[ でもそれで岸はクビになっちゃって ]
「 え〜 」
『 理由云々じゃなくて“殴る”って行為がだめだからね 』
「 上司殴ったら、なるな 」
「 いや、殴ってクビになるなら俺を殴った志摩もクビじゃないとおかしい 」
『 はっ?殴った? 』
「 そうだ!聞いてAちゃん、志摩ってば「 うるさい 」
[ パワハラのこと、もっと上の人に話したの? ]
志摩と伊吹君とボイスレコーダー、と。
耳から入る情報量がいっぱいいっぱいだ。
⋯ というか何?殴ったって。
.
97人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:たなか | 作成日時:2023年12月9日 18時