# 14 ページ15
.
「 ⋯ 俺のこと、信じてくれるわけ? 」
「 容疑者が乗ってるって話 」
静かだった車内に伊吹君の問いかけが響く。
⋯ メール、は一旦保留。
で、志摩はどう言うかな。
「 あっ、信じてない 」
「 なんだよっ!!! 」
『 っふは、冷たいなぁ志摩ぁ 』
「 別にさっきの警官も信じてない 」
「 可能性がゼロになるまで確認はする 」
「 あぁ ⋯ “他人も自分も信じない”だっけ? 」
⋯ 志摩の良いとこであり悪いとこだよね。
志摩の用意周到さとかはこれから来てるわけで ⋯ 一概に悪い、とは言えない。
私は好きじゃないけどね。
「 ⋯ 俺さ、昔からめっちゃ職務質問されんだよね 」
「 だろうな 」
「 学生の時も、学校で備品がなくなったっていやぁ 」
「 教師が伊吹じゃねぇかって、いっつも俺が疑われてさぁ 」
「 ⋯ もう言い訳すんのも嫌んなって 」
「 信じてくれなくていいや、だったら俺も誰も信じない 」
⋯ 人は見かけによらない、っていうか。
率直に、ただただ意外。
むしろ伊吹君は人を信じすぎるタイプかなって ⋯ 昔はそうでもなかったのかな。
「 でもさ、いたんだ 」
「 たった一人だけ、信じてくれた人がさ 」
「 ⋯ だからさ、志摩ちゃんもAちゃんも 」
「 俺のこと、信じてくれていいんだぜっ 」
ミラー越しに笑いかける伊吹君がやけに輝いて見えて ⋯ 羨ましい、と思ってしまった。
私はその言葉をかけることができなかった。
「 ⋯ 結構です 」
「 なんだよっ!!! 」
「 えっ、ねぇっ!Aちゃんは?Aちゃんは信じてくれるよね??? 」
『 ⋯ ん?うふふ 』
「 もーっ!Aちゃんまでっ!!! 」
伊吹君の叫び声に続いて、携帯電話の着信音が鳴り響く。
陣さんだ、なにか情報手に入ったかな。
「 もうっ、“結構です”すっごい嫌 」
小さな文句が何だか可愛らしくて笑いそうになると、勢いよく伊吹君が振り返る。
わぉ ⋯ 野生の勘ってやつ?
「 言っとくけど!Aちゃんの“うふふ”も傷ついたからね、俺 」
「 “うふふ”で誤魔化されないからねっ! 」
むすっ、とした顔。
しーっ、と人差し指を立てればジト〜っとした視線を送られる。
少しして、前を向いた。
「 しーっ! 」
志摩が伊吹君に、そして振り返り私にも人差し指を立てると通話に出る。
言われる前に黙ってましたけど!
スピーカーからは陣さんの話し声。
.
97人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:たなか | 作成日時:2023年12月9日 18時