# 11 ページ12
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[ 警視庁から各局 ]
[ 品川区西森で発生した殺人事件の容疑者が現場から逃走 ]
ふと、無線が入る。
品川区西森か。
「 近いな 」
『 ね 』
[ 容疑者は28歳男性 ]
[ 黄緑のジャンパーにジーパン 痩せ型 ]
[ 凶器を所持してるもよう ]
28歳 ⋯ まだまだ若い。
現地点の情報じゃ特定は難しいかな。
「 ⋯ 前の車 」
「 ん? 」
「 あっ、だめだ、逃げられる 」
突拍子のない、意図の読めない呟き。
疑問を持つ前にアクセルが踏まれた。
『 ちょっ、 』
「 あぁっ、待った待った待った ⋯ 」
志摩がブレーキを作動してくれた ⋯ っぶなぁ。
体の力がスっと抜ける。
「 もう何すんだよ! 」
『 いやいや、落ち着いて伊吹君 』
「 赤だろ、何やってんだ 」
「 逃げられちゃうだろ? 」
逃げられちゃう、って ⋯ 。
まずは状況把握かな、これは。
『 志摩、前どうなってる? 』
「 前は詰まってる平気だ 」
「 ⋯ 容疑者が乗ってる 」
「 はっ? 」 『 えっ? 』
「 さっき一瞬おばちゃんのフード掴んだ腕が見えた、袖の色は黄緑、逃げ出した容疑者と着衣が一致 」
『 ⋯ えぇっと、待って、袖だけ? 』
「 だけ 」
「 “ 一瞬 ” 」
「 一瞬だけ見た 」
「 “ 袖だけ ” 」
“一瞬” “だけ” を強調して志摩が問いかける。
伊吹くんは訝しげな顔。
「 何?もう何度も聞くなよ、メロンパンの次は袖袖魔人かよ 」
『 袖の色だけで犯人だとは言えないよ 』
「 Aの言う通りだ 」
「 黄緑の服着た奴が都内に何人いると思ってんだよ、一瞬見た袖の色だけで容疑者が乗ってるなんて誰が信じるんだよ 」
「 様子がおかしかったの 」
『 さっきのおばちゃん? 』
「 そう!運転してたオッサンも、まじで 」
「 でも袖だけだろ 」
「 だけ 」
はぁ、と志摩のため息が一つ。
⋯ 現段階じゃ犯人だとは言えない。
でも、犯人じゃないとも言い切れない。
『 走る人質監 禁 ⋯ 』
そう言えば、伊吹君が振り返る。
目を見開き嬉しそうな顔 ⋯ 間違ってないみたい。
志摩なら絶対思った通りの言葉を紡いでくれる。
そして、顔を上げた志摩と目が合った。
「 ⋯ 立てこもり? 」
「 うんうんうん ⋯ うん! 」
流石志摩、よくわかってる。
伊吹君も首縦に振ってるし、私たちの考えは一致してる。
またも志摩のため息が聞こえ、その手は無線に伸びた。
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作者名:たなか | 作成日時:2023年12月9日 18時