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「 や、だってめっちゃ目合うんだって 」
『 ふっ、そんな? 』
「 いや、パン屋じゃねぇよ 」
「 何が?」
また赤信号かぁ ⋯ 伊吹君、横向いたままだ。
隣そんなに気になる???
「 伊吹、青 」
「 あっ、うん 」
完全にうわの空だ。
走り出しても ⋯ 背筋を伸ばしたり屈んだり、と。
まぁ、うん、所謂挙動不審ってやつだ。
「 310円 」
『 310円? 』
志摩の脈略のない言葉に聞き返す。
なに、310円って。
なんで志摩は平然とした顔してるの?
「 何が? 」
「 メロンパンに400円以上は出せない 」
『 メロンパンの話かーい 』
「 いつまでメロンパンの話してんの 」
「 お前がメロンパンの話したんだろ!おい! 」
ホント律儀だな、志摩は。
多分そんな長考することじゃなかったよ。
『 も〜、志摩ぁ 』
「 俺か?!俺なのか?! 」
『 いや、志摩しかいないじゃん 』
「 いや、おかしいだろ! 」
「 お前らさっきまで ⋯ 『 しつこーい 』
「 お前な ⋯ ! 」
振り向いた志摩の怖いこと怖いこと。
さっきからお前お前 ⋯ 。
『 ⋯ お前ってだーれ 』
「 ⋯ 」
首を傾げわざとらしく問いかける。
志摩のため息がひとつ、今はもう完全に呆れ顔。
「 ⋯ A 」
『 ⋯ 』
「 ⋯ なんか言えよ、なんだその顔 」
にやにや、と上がる口角を抑える。
いやだって志摩すごい仏頂面。
「 ねーぇっ、俺置いてけぼり! 」
伊吹君を見れば、口をすぼめ不服そうな顔。
『 っふ、ごめんごめん志摩が 』
「 志摩がってなんだよ 」
『 変な顔してたじゃん 』
「 お前に言われたくない 」
なんだそれ、私も変な顔だったって言いたいのか。
ふんっ、と鼻を鳴らし志摩は前を向き直した。
「 あっ!そーだ 」
「 Aちゃんも俺のこと名前で呼んでいーからね 」
『 えっ、いいの? 』
「 いいよっ藍でも藍ちゃんでも何でも 」
『 藍ちゃん!かわいーね、漢字なんて書くの? 』
「 んーっと ⋯ 」
あっ、失礼な質問だったかな。
でもまだ書類ちゃんと見てないし ⋯ 。
っていうか伊吹君遅くない???
「 ん? ⋯ うぅん 」
「 ⋯ 藍色の藍だろ、なんでそんな遅いんだよ 」
「 ぅっ、だってあんま聞かれないし ⋯ 」
『 音の響きもだけど、漢字も綺麗だね 』
「 ほんとっ?!うれしー 」
⋯ にっこにっこだなぁ、伊吹君。
嬉しそうで何より。
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作者名:たなか | 作成日時:2023年12月9日 18時