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『 ⋯ あ、もしもし?ゆづちゃん? 』

『 ごめんね、本当は昨日来る筈 ⋯ 今?芝浦署の前 』

『 ん?裏? ⋯ 分かった 』

『 待ってるね ⋯ って切るのはや 』





スマホを耳から離し、電源を落とす。

芝浦署前で待つこと数分、1つの足音が耳に入った。

聞き馴染みのある音だ。





「 A、ごめん待たせて 」

『 ⋯ !』





久しぶりに見る液晶画面越しじゃない姿に黙って駆け寄る。

静かに一度強く抱き締め離れる。





「 久しぶり、A 」

『 久しぶり、ゆづちゃん ⋯ って隊長か 』





そう言えば、少し寂しげな表情。

彼女の手を掬い、ぎゅっと握る。





『 TPOに合わせて、変えよっ!ねっ? 』

「 ⋯ そうね、じゃあ行こう 」

『 はーい!案内お願いします!隊長! 』

「 はいはい、分駐所はすぐそこ ⋯ で、それより!三人で組んでもらうって話したわよね? 」

『 うん、人が欲しいって志摩が呼んだんでしょ? 』

「 えぇ、私も呼ぶつもりだったんだけど ⋯ 」

『 じゃーあっ、問題児さん任せて下さいな 』





志摩が呼ぶとかよっぽどだけどね、とおどけて笑う。

もうっ、と呆れ笑いで返してくれる彼女に緊張感が薄まる。





「 ⋯ A、何かあったら即報告、分かってるよね? 」

『 もちろん、大丈夫!志摩も陣さんもいるんでしょ? ⋯ なら、ちょー安心!これほど安心な職場ないや 』





ね、と笑えば彼女の手が頭の上に。

⋯ 隊長さーん?私今年35ですヨ。

大人しくされるがまま少しして手が離れる。





『 ゆづちゃん、私にチャンスくれたんだよね 』





ありがとうと紡げば、ゆづちゃんは目をぱちぱちとさせてため息をついた。





「 Aにはバレバレね 」

『 すぐ気づいちゃったよ 』




なんて話していれば、ビルに入る。

進めば“第四機動捜査隊”の文字、見慣れたボード。

上がってきた心拍に、一度深呼吸をする。

ドアノブを握ったゆづちゃんが振り返った。





「 A ⋯ 入っても大丈夫?」

『 うん、入ろう 』





手を重ね、扉が開くと部屋には4人。

陣さんと志摩だ、と、もう二人もいた。

さっきの当番表と照らし合わせたら ⋯ 伊吹と九重かな?





「 えー!!!きゅるっきゅるっ!!! 」

『 “きゅる”? 』





知らない単語に思わずオウム返し。

いきなり距離を詰められる。

反射的に後ずさり、手は腰付近に伸びた。

室内なのになんでサングラス ⋯ っていうかガラ悪っ!!!





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作者名:たなか | 作成日時:2023年12月9日 18時

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