【名探偵コナン】零の食卓【降谷零】

警察官とドライブ ページ7

「お前とは絶対に将棋もチェスもポーカーもしねえ」

「来年のお年玉無くなっちゃうじゃないですか」

「その可愛いツラで中年ジジイに媚びてりゃいいだろ」

「憲誠さんおいくつでしたっけ」

「５６」

「あっ、もう老年か」


憲誠が煙をAに向かって吐く。ふしゅう。

Aはそれを真っ向から受けてゲホゲホとむせた。


「八つ当たりは良くないです」

「このやろう、誰がこの車運転してると思ってんだ」

「とってもかっこよくて老年なんて言葉が似合わないダンディなお兄さんですよね」

「ボンネットにくくりつけて走ってやろうか」

「道交法としてそれはどうなんですか」


車は東京を抜けると多摩川を飛び越え神奈川に入った。


「横浜ですか」

「おう。飯食いてぇ」

「食事のためだけに」

「いいだろ。奢りだから文句言うな」

「最高」

「このクソガキめ」


車は海沿いを走ると徐々に市街地へと入り込んでいった。


「で、なぜ私を警察に」

「自分でもわかってんだろうが、お前の頭が必要だ」

「はあ。それなら名探偵な彼の手を借りればいいじゃないですか。狩るべき相手を見誤っているのでは」

「狩るとかいうんじゃねえよおっかねえな」

「あなたにだけは言われたくなかった」

「お前のその頭は優秀だ。男のあいつにもできないことが、女のお前にはできる」

「ジェンダーフリーの時代にその言葉ですか」

「そうじゃねえ。そういう意味で言ってんじゃねえ」

「知ってますよ。でも、私は警察にはならない」

「兄貴のことか」


Aは憲誠をちらりと見やる。もう彼は煙草を口にしてはいなかった。


「いいえ」

「じゃあなんだ」

「言ったでしょう。非力なんですよ」

「どうだかな。俺がゴリラみたいに仕立て上げてやるよ」

「それはちょっとどうなんでしょうね……」


男の指が煙草の箱を弾いた。Aはため息を飲み込んで、もう一本追加してやる。


「あの名探偵のガキの助手でもするつもりか」

「工藤くんにはもういますよ。可愛らしくて美人で負けん気の強いお姫様が」

「はっ、じゃあてめぇどうするつもりだ」


Aは座席に座り直すと、ため息をついた。


「このタイミングで言いたくは無いんですけど」

「………」

「まだ決まってないんですよ」

「警察最高じゃねえか」

「いやです」

「んだよめんどくせぇな！」


もう若いのってほんとわかんねぇ！ 憲誠が短髪を掻く。その横でAがコロコロ笑った。

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