好きスキー ページ25
「未体験ですね……」
Aが困ったように笑う。彼女の纏う服がいつも以上に防寒対策を施したものであることで、ご理解いただきたい。
眼下……というより、目の前に広がるのは銀世界。雪、雪、雪。
工藤新一と春日Aが今現在立っている場所は、銀世界のど真ん中であった。
この話を始めるには、最初に戻る必要がある。
■□■□■□■□■
時は流れて、冬。二回生をもう少しで終わらせる時期に、工藤新一から誘いがあったのは相変わらず、事件の話だった。
正確に言えば、工藤新一を通して秋本や降谷からやってくる事件事故解決の協力依頼。
そして、今回の話はスキー場。このクソ寒い中、雪のど真ん中。
事件の内容としては強盗なのだ。スキー場にあったボードやらヘルメット、それから売上を盗んでいった輩がどう逃げたかを追うためにとのことでやってきた。
そして、スキー場の本部から逃げたであろう場所を確認するため、スキー場のゲレンデ外へとやってきた。
積雪のためか雪に足を囚われながら、工藤、春日、降谷とその他の人間でうむうむ悩む。
本当は今日、秋本も来る予定だったが、上のお偉いさんに捕まって急遽これなくなってしまったそうで、降谷が代わりにやってきた。
「向こうの端っていうのが、問題なんじゃないの」
「ならあっちから、右手側を通過して、あそこまで?」
「いや、左手側なら向こうの端に行きやすい。ボートを持ってたなら、それを使えば十分でしょ」
ああだこうだと言い合う二人に、降谷も加わる。
「向こう側から来たとすれば、左手側の柵で反対に抜けられる」
「じゃあ左手側の柵を越えて……そうか、そこからか。あっちの奥の方に行ってみようぜ」
工藤とスキー場のスタッフを先頭に、雪の中を歩く。その間も工藤はスタッフの話を聞き、Aも首をひねらせ考えに耽っていた。
その時だった。
何かが爆発するような音が聞こえたのは。
次いで、地響き。細かく揺れる地面に、スタッフのひとりが横を向いて顔を驚愕の色に染める。
「雪崩だ!!!」
巻き上げる雪を目前に、スタッフと警察関係者が前の方にいた工藤を森の奥に引っ張っていく。
彼の居た場所が雪の浅いところでよかった。だが、Aのいた場所はある程度深さがあった。
Aと降谷の近くにいたスタッフもこちらに手を伸ばして……次の瞬間、視界が揺れる。
まずい、そう思ったときには遅かった。
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◎たなは◎(プロフ) - 仕立て屋さん» コメントありがとうございます! 返信が遅くなりすみません。大変嬉しいお言葉です! 美味しく楽しく元気よく、これからも仕立て屋さんがもぐもぐされますよう心からお祈りしております。 (2017年6月17日 18時) (レス) id: 8b768110c2 (このIDを非表示/違反報告)
仕立て屋(プロフ) - 最後の最後で泣かせやがってちくしょうが!(誉め言葉) ついついほろりと来てしまいました。ご飯は感謝して、美味しく食べるのが一番だと改めて思いました。 遅くなりましたが、完結おめでとうございます。またどこかで、伏線等々は供養してあげてくださいませ。 (2017年3月26日 22時) (レス) id: 12a3217b1f (このIDを非表示/違反報告)
◎たなは◎(プロフ) - Razu.さん» はじめまして。コメントありがとうございます! とても嬉しいです……! お腹も心も満たせる、そんなきもちをお届けできていたら幸いです。 (2017年3月25日 15時) (レス) id: 8b768110c2 (このIDを非表示/違反報告)
◎たなは◎(プロフ) - 莉子さん» いえいえ、上手とはいえません……! どちらかというと食べる方が好きです。 (2017年3月25日 15時) (レス) id: 8b768110c2 (このIDを非表示/違反報告)
Razu.(プロフ) - 食事というテーマから、ここまで物語を造り上げられることに、本当に本当に憧れます。これからも応援してます!>< (2017年3月24日 16時) (レス) id: f9eec0b2ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:◎たなは◎ | 作成日時:2017年3月15日 22時