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Aは自分の仕事を切り上げると、清澤に労いの言葉をかけてから一足先に社を出た。
夕飯はどうしようか、と考えながら、足を駅に向かわせつつ冷蔵庫の中身を思い浮かべる。

 そういえば、今朝買い物をして帰らなければと思って家を出たんだった、とAは思い出し、それから財布の中身を流れるままに思い出す。最後、打ち合わせで財布を開いたときに銀行にも寄ろうと思ったのだ。
 駅に向かわせていた足をそのまま、近くの銀行へ方向転換する。コンビニATMでもいいが、今の時間ならばギリギリ銀行が開いている。手数料が取られないのであれば、少し遠くなるが数分違いの銀行まで行った方がいい。どうせ、仕事終わりで時間もある。

 正直、買い物が面倒なのでどこかに入ろうと思っていたのだ。適当なバルか、居酒屋。軽く飲んで軽く食べて、それで帰ろう。家に帰ったらお風呂に入って寝るだけにしたい。Aは人の往来する道にヒールを踊らせながら銀行までの道を歩いた。

 Aの横を、後ろを、前を歩く人々。
カップルもいれば、家族連れもいる。一人で歩くもの。二人で、三人で、連れ立って歩くもの。誰もが仕事終わりなのか少しだけ落ち着いた表情だ。朝のキリキリとした、黒板を引っ掻くような歪な音を聞いているような、嫌な顔をしているものは誰一人としていなかった。

 そんな中、Aも一緒に落ち着いた表情で歩道を歩く。明日も仕事だが、今日はちょっとしたご褒美に。作家の恋愛もうまく行った事だし、なんて変な理由までつけながらAは歩く。歩道を歩く。ヒールは踊り、Aの気分も踊り気味。


 だから。

 だからまさか、その十数分後にあんなことが起ころうとは。

 誰が思っていただろうか。誰が予想していただろうか。




 頭上。ほぼ、真上。

 ガラスが割れるような、それよりもう少し乾いた音が、耳を貫いた。

 突然の大きな音。上。咄嗟に、音がした方向を振り仰ぐ。

 穴。それも、小さい。

「えっ」

 穴? なんで穴? なにか爆発でもした? なにか落ちた? 照明が落ちたなら、足元に気をつけねば。足を見る。何も無い。あれ? 男の足が、近くにある。小汚い、履き潰したマジックテープ式のシューズ。

 ん?

 疑問が頭を駆け巡る。周りにあるのは静寂。同じ音は、A以外にも聞こえていると察せた。
今度は周りの状況を確認しようとした。首がガクン、と動いたのはその時だ。

思いっきり引き寄せられる。

「えっ」

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(プロフ) - えっ……天才。 (2018年10月21日 21時) (レス) id: 057c14ed72 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:◎たなは◎ | 作成日時:2018年10月15日 21時

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