【名探偵コナン】下書き【降谷零】 (ページ4)

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「あそこに寺田さんが移動すれば、隣の席に内山さんがいます。二人仲がいいでしょう。丁度いいじゃないですか」
「でも」
「どうせ席替えしたばかりなんだし、今動いたって何も問題ないですよね。寺田さん、どうかな」

　零は隣を見もせずに言い放った。自分がどれだけ利己的で暴力的なことを言っているか理解していたが、しかしこの機を逃してはならないと思ってもいた。
それに教師も教師だ。零の隣の席は二人いる。左隣のクレープの件の女子寺田と右隣のスコッチ。この女性教員はスコッチを動かそうとは考えなかった。それは、スコッチと零の仲の良さを知っているからである。寺田にしてみれば戦争がいつもそこにある教室内で灯台のようなものであった教師から言われたのだから、地獄のようであろう。

　寺田は絶望的な表情をしていたが、それを一生懸命に隠そうと顔をあげて頷く。小さな声で「うん、いいよ」と言った。声が震えていた。
　零はとびっきりの笑顔で「ありがとう！寺田さんはやっぱり優しいね」と言った。最悪な人間だな、と自分でも思う。隣でスコッチが「あーあ」と言った声が聞こえたが、この声の本心は「またかよ」の意であるから放置だ。

「寺田さんがいいって言うなら今回だけは良しとします。でも降谷くん、ちゃんと学校のことクラスのこと、加々美さんに教えてあげてよ？」
「任せてください。な、スコッチ」
「あぁ、任せろ」

　ニィッと顔を上げると教師は申し訳なさそうな表情を寺田に向けた。

「じゃあ、寺田さん移動してもらってもいいかな。椅子に番号貼ってあるから、机ごと移動してね」

　その言葉を皮切りに、教室はざわざわと動き始めた。寺田の動かす机が通りやすいように道を開ける者、空いた机を零の左隣に動かしてやる者。
加々美は机を動かす寺田に近づくと、親近感を持ってして笑いかけた。

「後で叱っておくから」

　この教室は、剽軽な男子児童を中心に回っていたのでも、真面目な学級委員を中心に回っていたのでもなく、降谷零という、静かで表立たず、しかししっかりとそこに存在している人物で回っていた。
女子に人気があり、いざこざを起こす理由も零。男子がサッカーや野球に誘い、勝利を獲得する一人になるのも零。
　剽軽な男子児童が赤と言えば、クラスの3割は赤と言う。しかし、降谷零という人間が黒と言った瞬間、3割が黒に変え、5割が「みんなが黒ならじゃあ私も」と黒になり、残りの2割が生き抜くために黒となる。