14階バルコニー ページ9
「馬鹿だな」
今日二度目の言葉を、素手で掴んで投げつけた。対する赤井はバルコニーの木製のデッキチェアに小さくなって撃沈している。返す言葉も無いらしい。
「電話は?」
「何度もかけているが出ない」
「当然だろ」
ため息は双方から漏れた。
「酒の勢いで元の女に一発かまして、本人登場とか笑えませんよ。壬生は何か言ったんですか」
「何も言わなかった。驚きの声しか」
「一応聞くんですが、その声、『え?』と『きゃっ!』と『は?』どれでした?」
「三番目だ」
「お前死んだな」
あなた知らないと思いますけど、あいつの驚いた時の声、法則性があるんですよ。え? の場合だと純粋な驚き。きゃっ! みたいな叫び声は猫かぶってるから全部わかってる時。は? に関しては最終形態です。
「なんだ最終形態って」
「僕は過去に一度怒らせたことがあります。あれは怖かった」
「君にも怖いものがあるのか」
「ありますよ、それくらい。むしろあの恐怖があるからある程度は耐えられる」
「俺は死んだな」
「何度死ねば気が済むんです?」
「ひどいジョークだ」
テーブルに突っ伏した赤井を見下ろして、降谷は鼻で笑う。
「降谷君」
「なんです」
「俺はこの歳になって、馬鹿なことをした。大切な人を傷つけたんだ。どうしようもない」
「本当ですね」
「反省している。だから、力を貸してくれないか」
白々しい視線で、降谷が顔を上げた赤井を睨む。しかし赤井も真剣な表情だ。鋭い視線に、降谷は「ふーん」と答えた。
胸ポケットから出したのは、端末だ。
「ふ、降谷君! 協力してくれるのか!」
「あなた、自分の電話番号であいつが出ると思ったんですか」
耳に当てて、ツーコール。
『何事』
でた。赤井の顔がパッと明るくなる。伸びてきた手を降谷は振り払って、睨みつけた。お前の出番じゃない!
「いや、お前今どこにいる」
『毒屋』
「言っておく。僕の目の前には赤井がいる」
『ふぅん』
素っ気ない返事の仕方が返ってきた。声には確実な意味が込められている。お前は、敵か。味方か。
「悪い。話は聞いた」
『そう』
声が冷たい。
『で? 悪いけど、犬と話せる能力は持ち合わせてない』
漏れ聞こえる言葉に赤井が絶句している。降谷はその姿を見て、かわいそうだな。と思った。
「あぁ、わかっている」
『言いたいことはそれだけ? 切るよ』
「お節介だとは思うが」
赤井は裏切りを知った。
「僕はお前の味方だ、壬生」
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名無し - 中途半端な終わり方で残念 (2020年11月29日 4時) (レス) id: 00f63b334e (このIDを非表示/違反報告)
kyouka(プロフ) - こちらはもう更新されないのでしょうか?面白かったので楽しみにしていたのですが、もうずっと更新されないまま他作品を始めてしまわれたみたいなので…できればまた再開してほしいです。お待ちしてますm(_ _)m (2018年9月8日 1時) (レス) id: 5e916ee117 (このIDを非表示/違反報告)
ドリィ(プロフ) - ◎たなは◎さんの書く赤井さんシリーズ大好きです!いつも楽しく読ませて頂いています。勿論、「ぼくたち無能なので。」も読んでます!更新が止まっているので、心配してます。無理せず頑張ってくださいね!これからも楽しみしてます。 (2018年7月5日 23時) (レス) id: 3c15da6a86 (このIDを非表示/違反報告)
◎たなは◎(プロフ) - つばささん» 初めましてたなはです。私はつばささんのコメントを見てニコニコが止まりません。嬉しいです。ありがとうございます。 (2018年6月23日 22時) (レス) id: b9c1cce9d4 (このIDを非表示/違反報告)
◎たなは◎(プロフ) - れおさん» ありがとうございます。笑いをお届けできて嬉しいです。更新お待たせしてしまいすみません。これからもどうぞよろしくお願いします! (2018年6月23日 22時) (レス) id: b9c1cce9d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:◎たなは◎ | 作成日時:2018年5月20日 9時