成田国際空港第1ターミナル ページ13
ここまでの道のりが長かった。一週間、どれだけ働き詰たことか。デスクと現場の往復を繰り返しながら、着替えと風呂だけのために自宅へ一度戻ってはまた職場へ。睡眠は仮眠室を借り、食事は外食で生き延びていた。この一週間でやっと吉牛とすき家の味の差を知ったし、仮眠室の埃っぽさも知った。
一週間。ゴリゴリ働き詰た結果として壬生のデスクにあった仕事は粗方片付き、急を要する案件は見事処理された。後は基本的に後輩や部下に任せて問題ないだろう。何かあったら仕事用の端末に連絡をと言ってある。仕事柄何かあった時のために離陸と着陸の時間は上司に伝えなければならないが、それ以外であればこちらから仕事に振り返ることは無い。
キャリーバックを引きながら、壬生は隣を歩く世良真純の横顔を盗み見る。アメリカへ旅行に行こうと思う、とメアリーに言ったのが先日、四日前。
するとメアリーはその場で「真純を連れて行ってくれないか」と頼まれたのだ。
『どうにも君のことが心配らしくてな。Aのことを信用していないわけでは無いから安心しろ。ホテルは取ったのか？ まだなら向こうの家に泊まってくれ。真純が鍵を持っている。旅行中使うと良い』
壬生はその言葉をありがたく受け取り、真純と一緒にアメリカへ渡ることを二つ返事で決めた。アメリカへは旅行だ。観光をするために行くのだから、真純がいれば各所で心強い。
電話の翌日、メアリーから事情を聞いた真純が嬉しそうな声で電話を寄越した時、壬生は少なからず良かったと思った。受け入れられているのだろうか、と今でも思ってしまう。
家族のいる赤井と、家族のいない壬生。双方、過去には色々あったが今は少しばかり穏やかだ。しかし、赤井家と壬生の繋がりは、赤井秀一という男だけ。赤井に他の女ができたら、自分以外の女性を好きになったら、自分以外の女性を愛したら。赤井家にとって壬生は「不要物」になる。そう思っていた。
独りに慣れていたつもりでも、手に入れたものを手放してしまえば悲しさが残り、その悲しみは手放した時の方が強い。今の壬生は、その悲しみに耐えられる力を持っているかと問われると首をかしげることしかできない。
だから赤井に浮気されたと知ったとき、一番に思い出したのは本当の家族のように思ってくれている赤井家の人々だ。メアリーを始め、真純も秀吉も壬生を心優しく迎え入れてくれた。まだ交際段階であるにも関わらず、まるで、家族であるかのように。
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名無し - 中途半端な終わり方で残念 (2020年11月29日 4時) (
レス) id: 00f63b334e (このIDを非表示/違反報告)
kyouka(プロフ) - こちらはもう更新されないのでしょうか？面白かったので楽しみにしていたのですが、もうずっと更新されないまま他作品を始めてしまわれたみたいなので…できればまた再開してほしいです。お待ちしてますm(_ _)m (2018年9月8日 1時) (レス) id: 5e916ee117 (このIDを非表示/違反報告)
ドリィ(プロフ) - ◎たなは◎さんの書く赤井さんシリーズ大好きです！いつも楽しく読ませて頂いています。勿論、「ぼくたち無能なので。」も読んでます！更新が止まっているので、心配してます。無理せず頑張ってくださいね！これからも楽しみしてます。 (2018年7月5日 23時) (レス) id: 3c15da6a86 (このIDを非表示/違反報告)
◎たなは◎(プロフ) - つばささん» 初めましてたなはです。私はつばささんのコメントを見てニコニコが止まりません。嬉しいです。ありがとうございます。 (2018年6月23日 22時) (レス) id: b9c1cce9d4 (このIDを非表示/違反報告)
◎たなは◎(プロフ) - れおさん» ありがとうございます。笑いをお届けできて嬉しいです。更新お待たせしてしまいすみません。これからもどうぞよろしくお願いします！ (2018年6月23日 22時) (レス) id: b9c1cce9d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：◎たなは◎
| 作成日時：2018年5月20日 9時
