【名探偵コナン】私も「どんな関係？」と問い、ケンカ何度もしたわ。【降谷零】

肉から臭みを消す方法は色々あるけれど、味を消すには会話が一番 ページ5

「…………は？」

　ぱくぱくとスープを口に運んでいく妹を目の前に、風見は思わずスプーンを持ち上げた手を止めた。

「『お兄さん』って」
「真純のお兄さん」
「それは」

　円堂はスプーンからポタージュをするりと口に流すとちらり、風見を見て悪戯な笑顔を向ける。

「赤井秀一さん」

　風見はスプーンを取り落としそうになった。目眩すらしそうだ。家族思いだということは、ここ数年何度か同じ仕事に携わって知っていたが。

「それで？」
「で、花束をもらった」

「…………っは！？」

　思わず大きめな声が出た。グラスに映る対象は相変わらず動きを見せないが、まさかこんな話を聞くことになるとは思ってもいなかった。

「え、えぇっと、それはまた、なぜなんだ。お前がもらったんだろう、鈴木のお嬢さんではなく」
「そう、私が」
「おまけとかじゃなく」
「そう、おまけとかじゃなく」

　風見は一生懸命色々な可能性を考えようとしていたが、面白いほどに頭が回らなかった。なぜ、赤井が？ あの赤井が？ なぜ？ ぐるぐる頭の中で疑問が一人走り回る。

　いつの間にか、円堂のスープ皿は空になっていた。風見の皿は、まだ底が見えない。妹は薄く困ったように笑ってグラスを見つめながら「メインが来てから話そうか」とカトラリーから手を離した。



＊＊＊＊＊



　風見が今日、このレストランに円堂を誘ったのは、少し気にかけている対象がホステスとここで食事をする約束を取り付けていたからである。欲しい情報は一つ。対象の男が「どのホステスと食事をしているか」ということだった。対象の男が何をしようと、大した問題ではないのである。
　そして、ホテルのランチに男一人というのは微妙に浮く。それを回避するために、二限目を終えた妹をつかまえた訳で。

　いくつか候補リストに上がっていた中のホステスが登場したことで、風見の今回の目標は達成された。

　だがしかし、事は変わった。風見の今回の目標は達成されても、まさか別の件でこんな話を聞くとは、誰が思っていただろう。

　スタッフが「ストリップロインステーキです」と置いていった皿に手をつけ始めてやっと、円堂は口を開いた。

「真純が私の話をよく家でしてたみたい。私の誕生日先月だった事も話したらしくて、それで」
「………………」
「赤井さん曰く『一ヶ月遅れだが、お祝いと、感謝も込めて』だって」
「………………」

　もう正直、肉の味なんてしなかった。

肉から臭みを消す方法は色々あるけれど、味を消すには会話が一番→←二、肉から臭みを消す方法は色々あるけれど、味を消すには会話が一番

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す