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Aは砂時計が好きである。
といっても、熱狂するほどというわけでもなく、なんとなく、好きなのである。
必ず砂は一番最後、山となる。そして、ひっくり返せばまた山をつくる。
崩れては、また山をなし、崩れては、また山をなす。
それをぼぅっと眺めるのが、どうにも好きだった。何か考えているのに、何も考えていない。
砂がさらりさらりとおちていくように、少しずつ少しずつ、頭がからっぽになっていくのが実感できる。
何も考えないというのは、やろうとしてできるものではない。
事実、「今から1分間何も考えないでくださいね」と言われて、はいできますとやれる人の方が少ない。人は常に何か考えているのだから。
しかし人間は、ずっと考えていればパンクしてしまう。頭の容量が足りなかったり、充電が底を尽きたり、ヒートして上手く回転しなくなったり。
Aは、容量をやりくりすることができた。砂時計を眺めるのが、彼女のそれである。
しかしAは思う。これは自分以外にもできることであると。
まず、考え事をし続けると頭がパンクすることを知ること。
そして、自分に合った容量の入れ替え方を知ること。
この二つができてしまえば何ら問題ない。
それでも案外、気づかないまま過ごす人間が多く、気づかないまま苦しむ人も多い。
Aは今日も砂時計を眺めながら思う。
そういった人々は、どうやって落ち着いて生活できるのだろう。
Aは今日も五分間、頭をからっぽにする。
■□■□■□■□■
こめかみを親指でぐりぐりと押した。ぐあんぐあんと痛む頭にムチを打って千桜はデスクのノートパソコンを睨みつけた。相変わらず左手は忙しくキーボードを叩き続けている。
周りは既に今夜の晩御飯は何にしようか、今夜の晩御飯は何だろうか、今夜の晩御飯を誰と食べようか、わいわいと騒ぎ始めている。退社時刻が着々と迫っているものの、千桜はこのプレゼンを明日行うのだ。
本当はこうなる予定ではなかったのだが、下のミスで日にちが大幅にずれ込んで千桜が悲鳴を上げることになった。しかし下の人間を怒るには、今回のことで下に叱れるほどのミスが無かったのだ。下も下で今頃ブチギレていることであろう。相手企業の連絡不足だったのだから。
コピー機を総動員させて書類で山をつくり、さあやっと終わったと思ったときには、頭痛は酷いものになっていた。
まるで頭の中に鐘でもできたようだった。
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篠屋裕季(プロフ) - ◎たなは◎さん» お力添え致せたこと、幸甚に存じます。何気無い日常を記していくような、そのなかに流れる一つの川のようなものを感じることが楽しいです。また立ち寄らせていただきます。 (2017年8月22日 12時) (携帯から) (レス) id: f2dc7330c9 (このIDを非表示/違反報告)
◎たなは◎(プロフ) - 篠屋裕季さん» コメント・ご指摘ありがとうございます!修正いたしました。篠屋裕季さんのお時間を使って読んでいただけることとても嬉しく思います。お手隙の際にまたお立ち寄りいただければ幸いです。 (2017年8月22日 9時) (レス) id: 8b768110c2 (このIDを非表示/違反報告)
◎たなは◎(プロフ) - Lucyさん» コメントありがとうございます! そう言っていただけて私もとても嬉しいです。街灯も星も頭より上に存在するものとして、ふと顔を上げてもらえたらなと思って書いております。遅いペースの更新になりますが、よろしければお付き合いくださいませ。 (2017年8月22日 9時) (レス) id: 8b768110c2 (このIDを非表示/違反報告)
◎たなは◎(プロフ) - 七味さん» コメントありがとうございます!嬉しいお言葉とても励みになります。これからも遅いペースではありますが更新していくのでよろしくお願いします。 (2017年8月22日 9時) (レス) id: 8b768110c2 (このIDを非表示/違反報告)
篠屋裕季(プロフ) - 「砂時計を眺めるのが、彼女のそれであr。」になってます。「ある」ですよね?突然すみません。このコメントは削除していただいて結構です。いつも楽しく拝読しています。更新頑張ってください。 (2017年8月22日 0時) (携帯から) (レス) id: f2dc7330c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:◎たなは◎ | 作成日時:2017年6月18日 20時