11月8日深夜 ページ4
目を覚ませば、どういうドラマの見すぎだったのか、そこには知らない世界が広がっていた。自宅でも、警察庁の仮眠室でも、どこでもない。
疼痛に襲われる頭を重たげに動かして起き上がれば、これまたびっくり、足に何かがくっついている。なんだこれは。
足を見れば、それは何かの機械だった。サイズとしてはSDカードくらいの大きさに厚さ5ミリといったところだが、これが見事、両足首に特殊バンドに装着されている。なんなんだこれは。
起き上がることでわかったのは、今現在自分が持っているものが極端に少ないということであった。スーツ姿だったはずの自分は、上質な肌触りのシルク製ワンピース。結っていた髪もいつの間にか下ろされている始末。常に持ち歩いていたスマホも無ければ、GPS機能搭載の耳にはめ込む小型イヤホンすら無い。
薄暗い部屋に目を凝らし、ベッドサイドにあるテーブルを探したが何一つ見つからない。嫌な予感が背中を這った。
突如、視界が白くなった。照明をつけられたことに驚き、人の気配のある方向へ目を向ける。訓練の成果か、目の慣れは人一倍早い三守はその姿を捉えて、絶句した。
「やあ、起きたか」
パーティで見た笑顔とは違う、薄気味悪い笑みをたたえた男がそこにはいた。敏腕スナイパーと呼ばれ、庁内の女性事務職員の中で「王子」だの「キング」だのと安っぽいあだ名をつけられちやほやされていた、イギリス生まれのアメリカ人。
「赤井捜査官」
三守が名前を言うと、赤井はその笑顔を少し悲しそうにしてから「捜査官なんて他人行儀じゃないか」と肩をすくめてみせた。一瞬三守は過去を思い出そうと必死になる。ファイト一発した覚えも、感覚も残っちゃいないことに安堵し、顔を上げて再度絶句した。
照明がついたことで、その部屋が随分広いこともわかった。寝室に寝そべる、大きなベッドの上に自分がいて、そして、その広いベッドの端に腰掛けた男が向ける目線が、気味の悪いものだということが、目の当たりにされた。
「随分眠っていたな」
「私の中では……そうですね、午後11時半すぎといったところなんですが」
「おっと、優秀な体内時計だ。恐れ多いな」
「どうも。それより、これは」
状況の説明を求めると、男の笑みが一段と深くなった。
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シルフィ - めっちゃ好きです!更新楽しみにしてます! (1月28日 17時) (レス) @page8 id: 5010c918af (このIDを非表示/違反報告)
ねねね - すごい好み! (2020年3月6日 17時) (レス) id: d3b33fa87c (このIDを非表示/違反報告)
merion(プロフ) - とっても面白いです!!更新待ってます!! (2018年3月15日 20時) (レス) id: 29c216d5d4 (このIDを非表示/違反報告)
◎たなは◎(プロフ) - 裏切りのかすてら王子さん» コメントありがとうございます。更新させていただきました。長らくお待たせして申し訳ありません。楽しんでいってくだされば嬉しいです。 (2017年7月22日 14時) (レス) id: 8b768110c2 (このIDを非表示/違反報告)
◎たなは◎(プロフ) - 茅乃さん» コメントありがとうございます。長らくお待たせしてしまい、申し訳ありません。楽しんでいただけたら幸いです。 (2017年7月22日 14時) (レス) id: 8b768110c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:◎たなは◎ | 作成日時:2017年5月27日 15時