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中学の頃、先輩と同じように年度の途中で転校してきた子がいた。
彼は不器用で人見知りで、
あまりクラスのみんなとも馴染もうとしなかった。
でも、話してみたらすごくやさしくて温かい人で。
本当はみんなと仲良くなりたいけれど、
話すのが苦手だから勘違いされて寂しい思いをしていたんだって分かった。
その子の記憶が私の中ですごく鮮明なものだったのと、
先輩からクラスの話を聞いたことがなかったのとで、
もしかしたら先輩も彼と同じように
寂しい思いをしているんじゃないかって勝手に思ってしまったんだ。
「あ、沖ちゃん！どうしたん？」
昼休み、ほとんど毎日のように
先輩のピアノが聴こえる第2音楽室に行ってみた。
ひとりでご飯食べるより、
ふたりで食べたほうが楽しいんじゃないかって思ったから。
曲が終わったところで室内に入っていくと、
気づいた先輩が驚いたように立ち上がって言う。
「良かったら、一緒にお昼食べたいなぁと思って」
「え〜、嬉しい！ 食べよ」
音楽室に隣り合った2脚の机で先輩と並んでご飯を食べた。
先輩は購買で買って来たらしいカツサンドとメロンパンを食べていた。
「メロンパン美味しそうですね」
「あ、沖ちゃんもひとくち食べる〜？ 卵焼きとトレードしたってもええよ」
「交渉成立ですね。笑」
「うわ、うまぁ……っ！これ、沖ちゃんママが作ったん？」
「お弁当、自分で作ってるんです。気に入ってもらえてよかった」
「えっらぁ〜……俺、起きるの遅すぎて絶対できひんわぁ」
「何時に起きるんですか？」
「7時50分ぐらい？」
「え、それ間に合います？」
「遅刻やね。笑」
先輩からもらったメロンパンは美味しかったし、
話していると時間の経過はあっという間で、
すぐに昼休み終了5分前のチャイムが鳴った。
「明日も来ますか？」
「うん、たぶん。沖ちゃんは？」
「私も、来ます」
「じゃあ、待っとる」
このときの私は、色々とわかっていなかった。
自分がどうしてここに来ているかも。
先輩がどんな人かってことも。
先輩が寂しい思いをしないように、
って勝手に勘違いして思い上がっていたんだ。
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夜木(プロフ) - こぐまさん» ありがとうございます！私の-S.Hirano-作品は完結した試しがないですが、温かい目で見守っていただけると嬉しいです……(^^;; (2020年7月8日 19時) (
レス) id: 3ad168143d (このIDを非表示/違反報告)
こぐま(プロフ) - 新作〜♪楽しみにしてます！！ (2020年7月7日 23時) (レス) id: 0a8e78817c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜木 | 作成日時：2020年7月7日 23時
