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Ep.36 ページ38

あの日以来、ゾム様の姿を見なくなった。
本当に見捨てられてしまったようだ。

「……こんなに静かだったっけ」

我々国にいれば誰かしら騒いでて
喧嘩していて
笑いあっていて。

実家に帰ってきてからも必ず傍にはゾム様がいた。

こんなに誰もいない時間なんて…
久しぶりすぎて。

「…大事な人に嫌われるって、結構辛いんだ…。」

知らなかった。
こんなにも彼に嫌われることが辛いなんて。

知らなかった。
こんなにも私は彼を好いていたなんて。

きっとそれはもう…懐きじゃない。
上司だから、とか。
仲間だから、とか。
そういうのではないんだろう。


ガチャッと部屋の戸が空いた。

「…お父さん?」

父「A…。お前、本当に良いのか?」

「何が?」

父は私の前に腰をかける。
私の手を握ると真面目な顔で問いかけた。

父「本当に、あの人と結婚するのか?」

「…うん。そのつもりだよ。
何。また反対しに来たの?」

またいつもみたいな「やっぱりダメだ!!結婚なんかさせるか!!」みたいな癇癪を起こすんだと思ってた。
でも違った。
父は真面目な顔のままさらに告げた。


父「お前の好きな人は別だろう。」

「っ…!な…にを…」

父「…わかるさ。お前と何年一緒にいたと思っている。
A。家のため、とか。同盟国のため、とか。
そんなのをお前一人で背負う必要は無いんだぞ。」


やめて。その言葉は今…ダメだ。
私の決意を揺らがさないで…。

「ううん…。私に出来ることなんて、そう多くないから…。」

父「A…。」

「いいの。彼と結婚する。」

彼と結婚すれば、情報も手に入る。

何より…彼の目的は我々国の弱体化。

幹部を攻め落とすのは骨が折れる。
だから、幹部と最も近しい私に近づいた。
なら、私があえて近づいて内部から崩していけばいい。

たとえそれで私が命を落としたとしても。
それで彼らを守れるなら。

「彼となら、私も幸せになれる気がするの。」

そう。彼と一緒になれば。
みんなを助けられる。だから幸せになれる。

父は口を噤む。
気まずそうに俯く父に微笑みかけた。

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雨々(プロフ) - 桜猫さん» なんと実はここで50話なんです (2019年5月10日 19時) (レス) id: 67d442b3b3 (このIDを非表示/違反報告)
桜猫(プロフ) - あ"あ"ーー!!夢主ちゃぁぁぁん!! (2019年5月10日 17時) (レス) id: b3a762d464 (このIDを非表示/違反報告)
雨々(プロフ) - 桜猫さん» わぁ!!いつも見てくれてありがとう!! (2019年5月7日 20時) (レス) id: 67d442b3b3 (このIDを非表示/違反報告)
桜猫(プロフ) - 眼福だぁ~!♪ヽ(´▽`)/ (2019年5月7日 20時) (レス) id: b3a762d464 (このIDを非表示/違反報告)
雨々(プロフ) - 桜猫さん» いぇいいぇい! (2019年5月4日 10時) (レス) id: 67d442b3b3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夕凪 | 作成日時:2019年4月14日 2時

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