７４ ほっと一息。 ＮＯside ページ39
安定の叫び声に驚いた海翔と薬研は、焦った顔つきで襖を開いた。叫び声の距離からするに、海翔と薬研の会話を聞いていた事は明白だ。それに、安定と清光は誰よりも早く淤御国の信用を得ていた刀剣だ。あの話を聞いていたなら、怒らない事も無理は無い。
「清光っ！！」海翔が最悪の事態を想定し、襖を開けた。
……………が、思っていたのと違う光景が、目の前に飛び込んできた。
「…え、何してんだ清光」
「自己嫌悪中です……」
「それ僕の台詞だろ」
………清光が、蹲って自己嫌悪していたのだ。
安定によると、清光は最初、海翔が刀剣を大事にしなくなったのではと思い、海翔を斬ろうとしていた。が、実はそうでは無い事を話を聞いて冷静に考えて気付いたそうだ。清光は、早とちりし過ぎた挙句、大好きな主である海翔を斬ろうとした自分に自己嫌悪した。という事らしい。
その自己嫌悪が余りにも長く、果てには思考回路がぶっ飛び始めた為、止むを得ず海翔達を呼んだのだそうだ。「…まあ、大事に至らなくて良かったぜ」薬研がほっと息を吐いて言った。
「本当御免主…。…こんな俺でも愛してくれる…？」
「何言ってんだ清光。謝る必要は無いぞ。お前が仲間を大事に思ってる事が判ったんだからな。それに、勿論お前を愛し続けるさ。大事な俺の刀剣なんだから！」
「まあ僕は斬ろうと抜刀する清光を止めたり自己嫌悪して思考回路をぶっ飛ばす清光を止めたり清光を止めまくって大変だったけどね」
「それはお疲れさん」海翔はそう言い、笑みを浮かべた。
「…そうだ、折角だし、久し振りに食事を取らないか？大将。皆大将と食べたがってんだよ」ふと、薬研がそう声をあげた。海翔はその提案に驚き、少し難しそうな顔をした。「俺は…元気な振りなんて出来そうに無いぞ。今だって…頭の中は淤御国の事ばかり考えてる」
「主、振りなんてしなくて良いんだよ。僕達は、主が傍に居てくれれば、それだけで良いんだから」
「そーそー。なんてったって俺達の主だしね。嫌いになんてなる訳ないし、刀剣皆、主が元気な振りをしてる方が辛くなるよ」
「そういう事だ。なっ、大将」
３振りは笑顔で海翔を見つめる。刀剣は只の物じゃない。其処には、確かに大切なモノがあった。海翔はそれを再認識し、満面の笑みを浮かべた。「…そうだな！矢っ張り、１人で抱え込むのは駄目だな！ご飯を食べよう！」
その後、海翔と３振りは、賑やかな会話をしながら、大広間へと向かった。
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